異例の一目惚れ選出の長澤和輝はハリルJの秘密兵器となれるか
「僕は背が小さいので、ストロングポイントといえば逆に重心が低いことだと思った。キュッ、キュッといった具合に、アジリティーみたいな部分があるので、そこをどんどん出していくのが相手にとって嫌なことだと」 2015年12月にオファーを受けていた浦和への完全移籍を決断し、逆輸入の形でJリーガーになった。前半戦を終えたケルンで出場が1試合に終わり、環境を変えて新たな挑戦を課すことがベストだと考えたからだ。 昨シーズンはJ2のジェフユナイテッド千葉へ期限付き移籍。「10番」を託されて41試合に出場し、日本のサッカーへ完璧に順応した。欠場したのは累積警告で出場停止となった1試合だけだった。 しかし、満を持して復帰した浦和では、メンバーをほぼ固定して戦うミハイロ・ペトロヴィッチ前監督のもとで、なかなか出場機会を得られなかった。ゆえにハリルホジッチ監督の目にも留まらない。それでも決して腐らなかった長澤は、この間に心も磨き上げている。 「サッカーは僕の仕事ですし、人生そのものというか、人生を懸けるものなので。試合に出る、出ないに関係なくいい準備をするだけだと、ずっと思っていました。試合に出ていない選手が常にいい準備をすることが、出ていない選手なりのチームへの貢献の仕方なので」 成績不振の責任を取る形で、ペトロヴィッチ前監督が解任されたのが7月末。コーチから昇格した堀孝史新監督は9月に入り、前任者の象徴だった「可変システム」から「4‐1‐4‐1」への変更を決断。インサイドハーフを置く中盤の形に変えたことで、長澤は自らが生きる場所を得た。 奇しくもハリルホジッチ監督が現時点のベストと自負する、W杯出場を決めたオーストラリア代表戦のシステムも、インサイドハーフを置く「4‐1‐4‐1」だった。W杯が開催されるロシアのピッチは全般的に荒れていて、重馬場をより得意とする長澤に向いてもいる。 「自分のよさである守備のところと、攻撃ではボールを前へ運び、パスを含めてゴールに直結するようなプレーをどんどん出したい。僕は初選出で、試されている部分もあると思うので、今回は気負うことなく思い切りやれればと思う」 まだまだ粗削りで、成長途上の部分はある。それでも、浦和で頭角を現した経緯や代表に大抜擢されたタイミングを含めて、ハリルジャパンの「秘密兵器」になりうる流れを背負っている男は、欧州遠征から敵地サウジアラビアで現地時間18日に行われるアル・ヒラルとのACL決勝第1戦へ続くタイトなスケジュールにも、「サッカー選手としてすごく幸せなこと」と目を輝かせながら日本を発った。 (文責・藤江直人/スポーツライター)