福島市が「ごみ袋の中身」調査 悪質な違反、個人名も公表へ 全国初
福島市は来年3月から、ごみの袋を開けて中身を確認する開封調査を行い、悪質な場合は事業者と個人の名前を公表する。17日の市議会で改正条例が可決、成立した。分別ルールを守らない違反ごみへの対策の強化が狙い。福島市の調査によると、開封調査は全国62の中核市の半数以上が実施しているが、事業者名に加えて個人名まで公表するのは全国の自治体で初めてとみられる。 福島市は2022年度の1人1日当たりのごみ排出量が1080グラムで、全国平均の880グラムを上回っており、減量化が課題となっている。分別ルールを守らずにごみを捨てる違反が横行し、23年度は約9000件の違反ごみが確認された。 現在は回収業者がごみ袋に黄色い「違反シール」を貼っている。市廃棄物処理清掃条例の改正後は、市職員が赤い「警告シール」を貼る。約1週間待っても改善されない場合は市が回収して開封調査を行い、郵便物などから違反者を特定。違反者には口頭で指導し、それでも改善が見られない場合は文書で勧告し、その後市ホームページでの氏名公表に進む。 福島市によると、ごみの開封調査で特定した違反者に対し、京都市と長崎県佐世保市は事業者名を公表する条例を定めているが、個人名までは公表していない。 ごみの開封調査や違反者の氏名公表を巡っては、市民のプライバシーの侵害も懸念されている。福島市は開封調査を第三者の目に触れない閉鎖空間で行うとし、「ルールを守らず、市の指導・勧告にも従わない悪質な排出者の公表に違法性はない」としている。 条例改正を受け、木幡浩市長は「この取り組みを通じて、ごみの不適正排出の現状を何とか是正したい。分別の徹底やごみの減量化推進につながるよう取り組んでいく」と話した。【松本ゆう雅】 ◇ごみの分別や減量を研究する中央大の篠木幹子教授(環境社会学)の話 罰則付きの対応を取ることで、違反を繰り返す事業者への効果はあるだろう。ただ、個人の氏名公表は厳しい。罰則によってごみの減量につながるとは限らず、監視コストもかかる。全体的な効果は限定的な可能性もある。本来は罰を前提にしたものではなく、市民と行政が協力関係を築ける制度が望ましい。市民をいかに巻き込んで福島市の在り方を示すか、という考えの方が生産的だ。条例改正を契機に、ごみ減量の目的や分別の理解促進に向けて、さまざまな話題と結び付けながら丁寧に伝えていくべきだ。