俳優人生50年、長塚京三「敵」で邦画19年ぶり東京国際映画祭3冠 男優賞、監督賞、グランプリ
<第37回東京国際映画祭クロージングセレモニー>◇6日◇TOHOシネマズ日比谷 コンペティション部門に出品された映画「敵」(25年1月17日公開)主演の長塚京三(79)が、最優秀男優賞を受賞した。「敵」は東京グランプリ/東京都知事賞と、吉田大八監督(61)の監督賞を併せて3冠を獲得。邦画の3冠制覇は、2005年(平17)の、根岸吉太郎監督(74)佐藤浩市(63)主演の「雪に願うこと」以来19年ぶり。邦画の最高賞受賞、日本人俳優の最優秀男優賞受賞も、19年ぶりの快挙となる。 【写真】受賞しトロフィーを掲げる吉田大八監督。最優秀男優賞の長塚京三 長塚が、1974年(昭49)のフランス映画「パリの中国人」でデビューして、今年で俳優人生50年を迎えた長塚が、自身初めて国際映画祭で主演男優賞を獲得した。審査委員長の香港の俳優トニー・レオン(62)からトロフィーを受けとると、驚きを口にした。「えっと…一昨日、レッドカーペットの上を歩いたら2晩たったらこういう事態…ビックリして、まごまごしています」。そして、作品を踏まえ「年を取って、独りぼっちで敵に閉じ込められる話…でも味方もいるじゃないかと、気を強く持った」と笑みを浮かべた。 そして、観客席を見つめ「ボチボチ、引退かなと思っていたので、奥さんはガッカリするでしょうけど。もう少し、この世界でやってみようかな。東京国際映画祭、ありがとう、味方になってくれた人、ありがとう」と感激を口にした。 「敵」は作家・筒井康隆氏(90)の小説を映画化し、脚本も手がけた吉田大八監督(60)がモノクロで描ききった。長塚は劇中で、妻に先立たれた77歳の元大学教授・渡辺儀助を演じた。映画への主演は、13年公開の「ひまわり~沖縄は忘れない あの日の空を~」以来12年ぶり。 長塚演じる儀助が淡い恋愛感情を抱く、清らかに清楚(せいそ)で妖艶な魅力をもつ大学の教え子・鷹司靖子を瀧内公美(35)が演じた。儀助の心中に幻想的に現れ、支配する妻・信子を黒沢あすか(52)、バーで出会い儀助を翻弄(ほんろう)する謎めいた大学生・菅井歩美を河合優実(23)が演じた。長塚は瀧内、河合とは初共演。撮影時は78歳だったが、妻を演じる黒沢との入浴シーンにも挑んだ。