【米国株ウォッチ】世界的なメディア企業、ニューズ・コーポレーションの見通しを分析
米ニューヨーク・ポストや英タイムズなどを傘下に収める世界的な多角的メディア・情報サービス企業であるニューズ・コーポレーション(ティッカーシンボル:NWSA)の株価は、米国時間10月7日現在、約26ドルで取引されており、年初来の騰落率は約6.5%となっている。S&P500種株価指数は同期間に約20%上昇しており、ニューズ・コーポレーション株は指数全体をアンダーパフォームしている。しかし、私たちは同社の長期的な展望について楽観的な見方を持っている。 ■直近の決算動向 6月に期末を迎えた2024会計年度のニューズ・コーポレーションの年間収益は、前年比2%増の100億ドル(約1兆4800億円)、調整後のEPS(1株あたりの純利益)は前年比43%増の70セントとなった。同社が過半数を所有するオーストラリアの不動産向けデジタル広告企業であるREAグループ、書籍出版部門のデジタル販売、ダウ・ジョーンズ部門などがこの成長を牽引した。一方で、ニュース・メディア部門における広告収入は減少し、米国の住宅市場が冷え込んだことにより、米国で不動産仲介サイトを展開するMove(ムーブ)の収益も落ち込んだ。 収益が1%減、EBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)が11%減だったサブスクリプション・ビデオ・サービス事業と、ニュースメディア事業(収益4%減、EBITDA23%減)の2つの事業部門を除き、その他の事業部門は概ね好調だった。 サブスクリプションビデオ・サービス事業では、Hubbl(ハブル)の立ち上げに関連する費用の増加や、契約料金の値上げに伴うスポーツ番組の放映権料の増加により収益性が低下した。ニュースメディア事業は、特にオーストラリアにおいて、引き続き印刷物からデジタルへの移行という難題に直面している。 ■今後の見通し 過去3年間におけるニューズ・コーポレーション株の年間リターンは、2021年に25%、2022年にマイナス18%、2023年に36%だった。 今後の見通しについて、ニューズ・コーポレーションはインフレ圧力などによるコスト増を見込んでいる。また、広告ビジネスの見通しは今後も限定的とされている。セグメント別に見ると、デジタル不動産サービスでは、7月の豪州住宅新規購入物件数が前年同月比12%増となったほか、10%の値上げの効果もあり2025年度におけるREAグループの業績見通しは引き続き明るい。来年度も主にメルボルンとシドニーの住宅市場の力強さに牽引され成長が続くとされている。主に法人向けのダウ・ジョーンズ部門では収益の増加が見込まれるものの、アップセリングと新製品への投資により、コストは緩やかに上昇すると予想されている。 私たちは2025年度の収益が前年度比3%増の104億ドル(約1兆5400億円)になると予想する。また、EPSは87セントと予想した。私たちはその予想EPSに、PER(株価収益率)予測値である34.4倍を掛け合わせ、目標株価を約30ドルとした。これは現在の株価よりも15%高い水準であり、私たちは現在のニューズ・コーポレーション株は割安だと考える。
Trefis Team