AIの台頭で変化する、企業がフリーランサーに求める技能
新しいテクノロジーが受け入れられ、利用が進むにつれて、企業がフリーランサーに求める技能も変化し続けている。 最新の事例は人工知能(AI)だ。企業幹部はAIに関連した専門知識や技能、サービスを自社で存分に活用したいと考えている。 このトレンドは拡大しており、履歴書サービスやリクルーター、雇用主とフリーランサーを仲介する企業なども注目している。 これまでにない業務が誕生 履歴書作成サービス企業Beem Jobs(ビーム・ジョブス)の共同創業者スティーブン・グリートは「AIが日常業務プロセスに統合されたことに直接起因して、10年前には存在しなかった業務が生まれている」と述べた。 「例を挙げると、AI倫理担当者や人間とAIのインタラクションデザイナーの業務を担えるフリーランサーへの需要が急増している。こうした職務を果たすには、テクノロジーと人間の行動に関する深い知識が必要だ。つまり、問題解決に向けたアプローチが、より多分野にまたがる方向にシフトしていることを示している」とグリートは指摘する。 最も需要が高い技能 フリーランス向けプラットフォーム「Upwork(アップワーク)」のフリーランサー採用動向に関する発表によると、機械学習やデータ視覚化、データ抽出、エンジニアリングといったAI関連技能10種に対する企業からの需要は、2023年第4四半期に前年同期比70%増加した。 このうち、新しいパターンやトレンドをもとにコンテンツを作成する技術であるジェネレーティブAIモデリングは、2022年時点では技能者を求める企業の要望はあったものの、Upworkのプラットフォーム上ではまだカテゴリーすら存在しなかった。しかし、翌23年にカテゴリーが新設されると、データ科学分析の分野で最も急成長した技能となった。
AI技能がフリーランサーの強みに
日常業務の自動化 AI技能(データ科学と機械学習)の人気が非常に高いのは、AIによって日常業務を自動化し、大量のデータセットを分析し、未来を予測する知見を得ることができるからだ。こうした技能を持つフリーランサーを雇うことで、企業は十分な情報に基づいて事業上の決断を下したり、特定業務を自動化したりできるようになると、採用プラットフォーム「Enjoy Mondays(エンジョイ・マンデイズ)」の創業者トラヴィス・リンデモンは説明した。 AI技能がフリーランサーの強みに AIのメリットを享受できるのは、企業側だけではない。企業に採用されるフリーランサーもまた然りだ。 就職マッチングサービスのTalentGenius(タレントジーニアス)のマルコム・フランク最高経営責任者(CEO)は「ウェブデザインからソフトウエア開発、データコンサルティングまで、業務を請け負うフリーランサーがAIツールを使って成果物を納品することが急速に一般化している」と述べた。 「同じく興味深いのは、AIがフリーランサーに主力技能を持つメリットを提供している点だ。個人は、企業よりもずっと迅速にAIという強力なツールを取り入れ、生かせる立場にある。そのためフリーランサーは、企業内の人間と比べて、速やかに行動を起こし、短時間でより多くの成果をあげることができる」とフランクは指摘する。 ウェブサイト作成企業Outbound(アウトバウンド)のアーロン・ホワイトCEOは、次のように述べている。「今日、企業幹部の多くがフリーランサーに対して、ワークフローにAIを取り入れることを期待している。その結果、かつては引っ張りだこだった技能が、いまや基礎的な要件となっている。こうした変化により、企業は次の3点をいっそう重視するようになった。それは、解釈力、問題解決力、納品スピードだ」
Edward Segal