“慶應ボーイ”ハードラー・豊田兼(21歳)が「195cmの超フィジカル」と「緻密な計算」でパリ五輪内定…「イチかバチか」攻めの決断で見せた圧勝劇
世界を見据えた「前半から飛ばす」決断
ところが、勝てばパリ五輪が決まる大舞台で、守りに入ることなく、攻める決断をした。確実にパリ行きを決めるには安全策をとる選択肢もあったはずだが、それをとらなかった。 走る前までは当然怖さもあったという。前半から飛ばすことにしたのは世界で戦うことを見据えたからだった。 「もしパリオリンピックに出場するとなった場合、前半から飛ばすレースを試す機会がないので、この決勝の舞台が絶好のタイミングだと思って、前半を飛ばしました」 攻めのレースをしても「思いのほか前半に余力があった」と言う。後半に入るとその力はより際立って見えた。2位の小川大輝(東洋大)も48秒70の自己ベストで、五輪参加標準記録に到達しており、ライバルたちも決して遅かったわけではない。 また、その果敢なチャレンジは決して“無謀な”ものだったわけではなく、緻密な計算の上で成り立ったものだった。 ハードルを跳んだ後の着地の瞬間を基にした各ハードル間のタイムをタッチダウンタイムというが、ウォーミングアップ時に3台目までハードルを跳んだ際のタイムが3秒67ぐらいだったという。 「それはちょっと速かったので、予選よりは速く、アップよりは遅くという幅を考えながら走りました」 走力はもとより、100分の1秒単位で修正する研ぎ澄まされた感覚が、絶妙なレースを実現させたというわけだ。 このタイムを再現できれば、パリ五輪では十分に決勝進出が狙える。ひと昔前であれば、メダルも狙えるタイムだが、近年は世界のレベルも上がっており表彰台に上がるにはもうひと伸びが必要だ。それでも、豊田のこの1年の伸び幅を見れば、思わず期待したくなる。 シニアの国際大会はパリ五輪が初めてとなるが、父の母国・フランスで開催される五輪でどんな走りを見せてくれるのか、ますます注目を集めることになりそうだ。 ちなみに400mハードルでパリ五輪を決めた豊田だが、実は110mハードルでも日本トップクラスの実力を誇る。 「この2種目を両立してやれる選手は、国内では自分しかいないのかなと思う部分もあるので、新しいロールモデルのようなものを目指して、両立したい」 日本選手権の前日会見では、そんなことを話していた。
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