出張中、行き帰りの新幹線でも作業してるのに「残業代ゼロ」?35歳チーフエンジニアが絶句した「会社の言い分」
週に一度、大阪へ出張することになったシステムエンジニアのA森さん(35歳、仮名=以下同)。早朝から深夜まで、新幹線の車内でも仕事をしているにもかかわらず、残業代も日当も出ないことを知る。納得できないA森さんは、総務部長に詰め寄るが……。知っているようで知らない、「出張」に関するルール。いったい誰が正しいのか、社会保険労務士の木村政美氏が解説する。 【マンガ】3500万の住宅ローン組んだ「年収700万夫婦」、「地獄を見た」ワケ
これだけ仕事に追われているのに……
A森さんは、大学卒業後、都内のIT企業に就職、企業の物流管理システムを開発する部門でシステムエンジニアをしていたが、もっとキャリアアップしたいと考え、昨年9月、中堅IT企業の甲社(2018年設立・従業員数200名)に転職した。 配属されたシステム開発課は総勢50名で、課長と2名のチーフエンジニア、あとのメンバーは多くが30歳未満の若手社員で、A森さんは部署内で3人目のチーフエンジニアとして自身の業務を担当しつつ、課長に頼まれて若手社員の技術指導も行った。 毎年業績が上がっている会社だけあって前職より忙しくなったが、職場全体は活気に満ち溢れ、若手社員に仕事を教えるのもやりがいを感じていた。 甲社は都内にある本社のほかに、西日本の業務拠点として昨年4月大阪営業所を開設した。その際、営業所長以下4名の管理職者は本社からの転勤組で、他の社員30名は現地で採用したが、未経験者や業務経験の浅い若手が多く含まれていた。 管理職だけでは教育指導の手が足りず、ヘルプ要員として週1回本社のチーフエンジニアが日帰りで出張指導を行った。しかし出張を担当していたチーフエンジニアが2月末で退職したため、急遽A森さんがそのバトンを引き継ぎ、3月から毎週金曜日に出向くことになった。 大阪営業所は新大阪駅から徒歩10分のオフィスビルに入っていた。A森さんは営業所の始業時間に間に合わせるため、朝5時に自宅を出て6時発の新幹線に乗り、8時30分新大阪駅に到着。オフィスで9時から18時まで仕事をし、18時30分発の帰りの新幹線で東京駅に着くのは21時、そのまま自宅に戻ると22時になった。 日々の仕事は忙しく残業がある上に、金曜日は朝から出張。行きの新幹線の中ではコンビニで買ったおにぎりでそそくさと朝食を済ませると、持参したパソコンで出張指導計画書を作成し課長にメール送付、残りの時間は前日にやりきれなかった仕事を片づけた。 オフィスで業務をしている最中は、計画書を見た課長から電話やメールで指導内容の変更や営業所長とのミーティング内容など詳細な指示が入り、あわただしく応対。 帰りはB中総務部長(人事・労務の責任者。以下「B中部長」)の指示により、月曜日の朝までに業務報告書と旅費精算書を提出しなければならないので、その作成に追われた。 大阪グルメを堪能できることを楽しみにしていたA森さんだったが、仕事に追われるせいで、帰りの新幹線の中でビールを片手にたこ焼きや串カツを堪能することさえも無理だった。