常勤医師15人が退職する中核病院の院長を解任…生活保護の患者に差別的な発言?行き過ぎた「救急は断らない」方針で軋轢
生活保護の患者に“差別的”な発言か
年間に6000台以上の救急車を受け入れている福岡記念病院。院長が代わって以降、受け入れ件数はさらに増加し、去年11月には病院が開設されて以来最多の716台を受け入れました。医療機関に受け入れを断られ、救急車が現場で待機する「救急搬送困難事案」が社会問題となる中、頼もしい存在と言えます。しかし、現場で働く医師や看護師は受け入れ態勢が十分とは言えず「いつミスが起きてもおかしくない」と話します。 救急担当の医師「一人一人に目が向けられなくなって、放置状態になってしまうような、違う患者に違う薬が行ったりとか、そういったことが起きてもおかしくない状態は度々あったような感じですね。このままではちょっと身が持たないのもあるし、心が持たない」 院長は「生活保護を受けている患者はトラブルの元」などど差別的とも受け取れる発言をしていました。 (音声データ・去年10月に録音) 院長: 「生保(=生活保護)だから多分ですね、寛解するまで(=病状が治まるまで)入院を言われると思うんですよね。早めに外来機能で良ければ外来に出して頂いて、生保の人には普通の対応を、金を払う方には濃厚な医療をするのが通常の医療じゃないかなと」 こうした理事長や院長に反発して今年3月末までに14人の医師が退職する予定です。さらに1人の医師が夏までに退職する意向を示しています。これは常勤医師のおよそ2割に相当しますが、病院側は「例年より退職者が多いが診療に影響が出ることはない」と説明しています。しかし、新型コロナや肺炎などを診療する呼吸器内科は、常勤医師がいなくなり、今の診療態勢を維持するのが難しい状況になるおそれがあります。
取材に応じた院長「新病院建設の責任者になりプレッシャー」
こうした状況について、院長は顔と名前を出さないという条件で取材に応じ釈明しました。 院長: 「僕の発言がちょっと過度に行き過ぎたところもありましたので、それは大変申し訳なく思っています。私どもの病院は、理事長の意志が反映されてそれを僕(=院長)が忠実に行う、実行していくという病院なので」 これまでの言動や方針転換は理事長からの指示だったとする院長は、去年のクリスマス、医師全員のレターボックスに謝罪文を入れました。 (要旨・抜粋) 『病院長になり、病院の利益率がかなり低いことが判明しました。福岡記念病院は全職員600~700人も在籍している企業で、新病院建設という大きなプロジェクトを抱えております。HCU(=高度治療室)に長期に在院し、ベッドが回転せず、さらにはその診療報酬が切られて赤字を出すという悪循環になっておりました。まずはそこから改善しないといけないと思いました。取り組みが急すぎたのは反省しております』 この謝罪文にある新病院の建設。福岡記念病院を経営する社会医療法人「大成会」は去年4月、ボウリング場があった「西新パレス」と隣接する土地・建物をおよそ65億円で購入。数年後には西新パレス跡地に新病棟を建設し、福岡記念病院を移転させる計画です。そのため、病院の利益率を上げる必要があったと言います。 『新病院建設の責任者にもなっていましたので、プレッシャーだった。この病院って理事長の意向が全てだからですね。(理事長に)嫌われるとクビになったりする可能性もあるから、どうにか理事長の方針とか普段言われていたことを遂行するかでちょっともう頭がいっぱいだった』 クリスマスに謝罪文を出した直後、先月28日の理事会で院長は解任されました。福岡記念病院は地域医療支援病院であるだけでなく、福岡県の災害拠点病院でありDMAT指定医療機関にもなっています。そんな地域医療の中核を担う責任がある病院の内部から聞こえてくる不協和音。患者や救急医療に影響は出ないのでしょうか?理事長に真意を聞くためRKBは、再三、取材を申し込んでいますが、これまでのところ理事長は取材に応じていません。