労働者には「大きな前進」だけれど…最低賃金改定の目安額、大都市圏と並ぶ「50円増」に地方の中小企業は頭を抱える
中央最低賃金審議会による最低賃金(最賃)の改定論議が24日決着し、鹿児島県の引き上げ目安額は、大都市圏と並ぶ50円となった。目安額通りに引き上げられれば947円となる。一夜明けた25日、県内の労使関係者からは「中小企業には厳しい数字」「大幅な前進だ」などの声が聞かれた。 目安額の50円は、時給で示す方式になった2002年以降過去最大だった昨年の実績44円を6円も上回る。鹿児島地方最低賃金審議会は今後、目安額を踏まえ議論を本格化させる。 同審議会で経営者側代表委員を務める県経営者協会の浜上剛一郎専務理事は「労働者の生計費を重視しての数字だろう。ここ数年は上げ幅が大きく、経営体力の乏しい企業にとっては厳しい額」と受け止める。 物価高が続く中、賃上げには理解を示しつつ、新型コロナウイルス対策の実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)の返済などもあり「懸念材料は多い。最賃には強制力があるため、審議では慎重に経営側の実情を伝えたい」と話す。
「地方の実態から目を背けている。政府が描く賃上げを実現するための額では」といぶかるのは、南九州ファミリーマート(鹿児島市)の飯塚隆社長。目安額は、経済状況に応じて都道府県をA-Cの三つに分類し、鹿児島はもっとも低いCランクに位置する。 それにもかかわらず大都市圏と同じ額で「地方は10~20円でも影響は大きい。元々賃金が高い都市部の50円と、低い地方の50円は意味合いが違う。引き上げ率を考えると都市部と比べ負担は大きい」と憤った。 労働者側代表委員の海蔵伸一連合鹿児島事務局長は、均一での目安額に「Aランクより2円低かった昨年の目安額39円と比べて大きな前進だ」と評価する。昨年は最終的に目安額を5円上回る44円で確定した。 一方で、目安額通り上乗せできても最も高い東京との差は200円以上あり、「都市部との差が働き手の県外流出を生んでいる。物価などを考慮しても、この差はあまりに大きい」と指摘。最賃の地域間格差是正の必要性も訴え、目安額以上の上積みを求める。
労働者からは歓迎の声が上がる。警備会社の契約社員(76)は「年金だけで食べていけないので仕事をしているが、月によって勤務日数はバラバラ。収入が不安定なので50円も上がればうれしい」と期待した。
南日本新聞 | 鹿児島