女性当選最多も、27府県で「ゼロ」◆偏りの理由は?超党派議連・中川正春氏に聞く【衆院選2024】
10月27日の衆院選では、女性の当選者が73人で過去最多となり、当選者全体に占める割合も15.7%と過去最高だった。しかし、全国の小選挙区でみると、27府県で女性当選者が1人もおらず、地域に偏りがあることも分かった。なぜこうした不均衡が生まれるのか。女性の政治参加を阻む壁はなんなのか。長年、女性議員を増やす活動に力を注ぎ、超党派議連の会長を務めた立憲民主党の前衆院議員、中川正春氏(74)に聞いた。(時事ドットコム取材班 川村碧) 【ひと目で分かる】女性当選ゼロの詳細な地図 ◇当選は「東高西低」? 取材班が小選挙区の女性当選者の分布を調べたところ、47都道府県のうち女性が1人も当選していないのは、大阪、兵庫、広島、福岡など27府県に上った。四国は4県いずれもゼロ、九州も長崎を除く6県でゼロ。近畿ブロックから西の地域の当選者は、奈良2区の高市早苗氏(自民)、島根1区の亀井亜紀子氏(立民)、長崎1区の西岡秀子氏(国民)、沖縄3区の島尻安伊子氏(自民)だった。比例でも、中国ブロックと北陸・信越ブロックは、女性の当選者が1人もいなかった。 東の地域では、東京が最多の6人で、神奈川、北海道の各4人が続く。ゼロの県は秋田、岩手、栃木、茨城など。全体を俯瞰すると、女性当選者は西で少なく、東で多い傾向が見てとれる。富山、長野、鳥取、佐賀は候補者の段階で、全員が男性だった。 この結果の背景について中川氏に尋ねてみると、「立憲民主党の強い地域、弱い地域と構図が似ている」と話す。西日本では、自民党が強く、「現職の男性候補者で埋まっており、新人の女性が出馬するのが難しい状況にある。一方で、立民は空白区に積極的に女性を立てて、女性候補者数が多かった。もともと(立民の)地盤が強い東日本で勝ったこともあり、こうした結果になったのではないか」と指摘する。 比例も含めた政党別の女性当選者をみると、立民が30人と最多で、自民19人、国民民主6人、維新、公明、れいわが4人で並んだ。共産3人、参政2人、日本保守党が1人だった。 ◇女性に立ちはだかる壁とは 今回の衆院選に立候補した女性は314人で過去最多。候補全体に占める割合も23.4%と過去最高だったが、政府が目標に掲げる「2025年までに35%」には届かなかった。女性が政治の道に挑戦する上での難しさはどこにあるのか。 女性の政治参画を推進する議連で会長を務めた中川氏は、家庭と政治活動の両立に悩む議員の生の声に数多く接してきた。ある子育て中の女性議員は子どもの朝の送り出しを優先して有権者への挨拶に秘書を向かわせたところ、有権者から「そんなことで選挙に勝てると思っているのか」と叱責を受け、議員を続けられるか悩んだという。 家庭との板挟みになる問題は、他分野で働く女性にもあるが、「政治の世界では極端に現れてくる」。中川氏は「この際、居直って、政治家といえどもオールマイティーで24時間選挙のために活動しなきゃいけないわけではないと支援者に理解してもらうことも大事だ。男性側がどう関わっていくか、そして政治と家庭を両立できる制度改革をやっていかなくてはいけない」と強調した。 一方で、候補者を公募しても「やりたい」と自ら手を挙げる女性が少ないのが実情。政党がふさわしい女性候補者を見つけて声を掛けても、「子育て中で難しい」「政治に関わる気持ちはない」などの理由で断られることも多いそうで、「政治に挑戦する意識は、子どもの頃からの主権者教育で培っていくことが求められる」と指摘した。引退する議員の後継選びのプロセスが不透明なことも懸念しており、「世襲制だと男性になることが多い。公募で選考過程をオープンにすることで女性にもチャンスが生まれる」と語った。