Chevon第一章完結、第二章へのプロローグを示したZepp Shinjuku公演
Chevonの快進撃が止まらない。Chevonは、谷絹茉優(Vo)、Ktjm(G)、オオノタツヤ(B)から成る3ピースバンド。2021年6月の結成以降、札幌を拠点に、全国のライブハウスでライブを重ねていく過程で、次第にライブシーン・フェスシーンにその名が轟き始め、今年の夏に敢行した全国ツアー「1st ONE MAN TOUR LIVE 2024. 冥冥」は、LIQUIDROOM公演を含む計6公演が瞬く間にソールドアウト。すぐに、ツアー本編を上回る計7カ所の追加公演が発表されたが、同じく瞬く間にソールドアウトとなった。今回は、並々ならぬ注目と期待が寄せられる中、11月27日(水)にZepp Shinjukuで行われた追加公演ファイナルの模様を振り返っていく。 【写真を見る】Chevon、Zepp Shinjuku公演(全15枚) 今回のライブの熱き口火を切ったオープニングナンバーは、「ですとらくしょん!!」だ。まるで、荒廃した街並みを豪快に闊歩するように轟く重厚なバンドサウンド。混沌を切り裂くように鮮烈に響く谷絹の歌とシャウト。ステージ上から放たれるバンドの猛烈なエネルギーを受け、フロアからライブ幕開け直後とは思えない大きさの歓声が上がる。特筆すべきは、ステージ背景の巨大スクリーンを駆使した圧巻の映像演出。夏のツアーの追加公演ではありつつも、単なるツアー本編の再演ではなく、全く新しい総合芸術を見せつけんとするバンド&スタッフの熱き気概を感じた。さらにこの日は、いつものサポートドラム小林令に加え、サポートキーボード&ギターの宮田“レフティ”リョウを迎えた5人編成によるパフォーマンスだ。筆者は夏のLIQUIDROOM公演も観たが、その時と比べて、演出面においてもサウンド面においても明らかな進化を遂げていることを冒頭1曲目から確信した。また、Zepp Shinjukuは、Chevonのワンマンライブ史上最も大きな会場であるが、3人の佇まいは軽やかな余裕すら感じさせるものだった。大舞台に挑むというよりも、バンドが誇るスケール感にやっと会場の大きさが追いつき始めた、というほうが正しいのかもしれない。 続いて披露されたのは、「No.4」。谷絹が放つ超ロングトーンに呼応するように、Ktjmが渾身のギターソロを炸裂させ、それに負けじと観客が熱烈な歓声で応える。「冥冥」では、谷絹の「叫んでくれよ!」という呼びかけを受け、観客がサビ冒頭の〈冥冥〉を高らかに歌い上げ、続けて、地獄の底から轟くような熾烈なシンガロングを巻き起こし、並々ならぬ一体感と高揚感が会場全体を満たす中でラストのサビへ。サビを繰り返すたびに谷絹と観客の歌声に滲む熱量が際限なく高まっていき、ここでKtjmとオオノがステージ前方の台に上がり、観客と至近距離でコミュニケーションを重ねていく。あまりにも熱烈な展開だ。そしてそのまま、「休ませませんよ!」「いけんのかっつってんだろ!」という谷絹による容赦のないアジテーションから「革命的ステップの夜」へ。フロアから巻き起こる怒涛のコール。サビでは観客が一斉ジャンプを繰り返し、谷絹は、右手の人差し指を高く掲げ、しなやかに舞うように身体を揺らしながら、会場全体の熱狂を鮮やかに指揮していく。まだ4曲目にもかかわらず、まるでクライマックスのような盛り上がりだ。 最初のMCパートで、谷絹は、今回のライブ(および、年内に残されたライブ)をもって、Chevonは第一章を終了し、2025年から第二章に突入することを宣言した。そして、これまでの一つひとつのターニングポイントとなったライブにどのような意義があったかを振り返り始めた。2022年7月にSound Lab moleで開催した1stワンマンライブ「山羊ノ肉」は、最初の自己紹介のライブであり、2023年6月、PENNY LANE24で開催した結成2周年記念ワンマンライブ「Banquet」は、Chevonというバンドのコンセプトを示す場であったという。2023年12月に開催した対バンツアー「大行侵」は、楽曲「大行侵」の中に綴ったように、これから「大行侵」していきたいという野心と展望を示すツアーであり、そして今回のツアー「冥冥」は、「大行侵」していく中で、どのような人になりたくて、どういう人と一緒になりたいかを明確に示すツアーであったという。谷絹は続けて、来年から幕を開ける第二章では、Chevonの存在を一つのジャンルと呼べるレベルにまで高めていくために、さらにギアを上げて進んでいくことを宣言した。 そして、谷絹は、Chevonの第一章を締め括る今回のツアー「冥冥」を続けていくにあたり、「私たちはどういう歌詞を書きたいのか」について語り始め、先ほど披露した「革命的ステップの夜」の2番サビの一節をアカペラで歌い上げた。〈ぐちゃぐちゃに泣いて 壊れてしまった音を 覚えて置いて 忘れないで それすらいつか 歌になる日が来るまで その歌はきっと誰かの事を 救っているよ 嘘じゃないよ 僕がそうだったから〉続けて谷絹は、自身の辛かった経験を歌にして、その歌によって救われたと言ってくれたリスナーがいることを語った上で、Chevonというバンドの存在、Chevonの音楽によって、「あなたの終着点が少しでもよくなればいい」と語った。そして、「薄明光線」へ。サビでは、眩いライトがフロアの一人ひとりの観客を照らし出し、逆光でメンバーの表情こそ見えないが、渾身のライブパフォーマンスを通して、〈あなたを救う歌詞が書きたいんだ〉〈私があなたに手を差し伸べることが出来たなら〉というバンドの想いが手に取るように伝わってきた。