第2期トランプ「中国叩き政権」発足が現実味を増す中で、中国が打ち出した対抗策「トランプ包囲網」の中身
どうする中国、どうなる中国
こうした「対抗姿勢」は、第1期トランプ政権の発足時にも見られた。 2017年1月20日、トランプ大統領は就任演説でこう述べた。 「私たちはこれまで、アメリカの産業を犠牲にして、他国の産業を豊かにしてきた。他国の軍隊を支援し、アメリカ軍を犠牲にしてきた。他国の国境を守りながら、アメリカの国境を疎かにしてきた。その結果、一つまた一つと工場が閉鎖され、他国に移転していった。中間層の資産は、世界中に再分配されていった。 しかしこうしたことは、もはや過去のことだ。いまこの瞬間から、アメリカ・ファーストとなる。貿易、税金、移民、外交などの問題に対する決断は例外なく、アメリカの労働者と家族の利益のために下す。他国がアメリカの製品を作り、アメリカ企業を奪い、アメリカの雇用を破壊する略奪行為から、この国を守らねばならないのだ」 一方、トランプ大統領就任の3日前に、習近平主席がスイスの「ダボス会議」(世界経済フォーラム年次総会)の開幕式で述べたスピーチは、下記の通りだ。 「世界が直面する不確実性を、経済のグローバル化のせいにするのは正しくないし、問題解決の助けにもならない。経済のグローバル化は、社会の生産力の発展と科学技術の進歩による歴史の必然的な要求であり、帰結だ。それを経済のグローバル化がもたらした問題があるからといって、それを撲殺しようとするのは愚かな行為だ。 私たちの正しい選択は、経済のグローバル化がもたらしたチャンスを十分に利用し、チャレンジに一致して立ち向かい、世界をよりよいグローバル化の道へと導いてやることだ。保護主義を掲げることは、暗室にこもって風雨に撃たれるのを避けているようなもので、それでは陽光や新鮮な空気からも隔絶されてしまう。他国に貿易戦争を仕掛けても、双方が傷つくだけで無意味だ」 思えば当時の習近平主席は、ダボス会議に集結した世界のVIPたちから、拍手喝采を浴びていたものだ。世界は「トランプ時代の混乱」を畏れ、その裏返しとして中国に期待していたのだ。 だがいまや、周知のように中国経済は失速。習主席が掲げる「総体国家安全観」(総合的な安全を第一にしていく政策)も、特に先進国から疑心暗鬼の目で見られている。 いずれにせよ、トランプ前大統領は、さらにパワフルになってホワイトハウスに戻ってくる可能性が高まってきた。どうする中国、どうなる中国――。(連載第734回)
近藤 大介(『現代ビジネス』編集次長)