『マキバオー』作者が驚き「超絶アウト!」、イラストとロゴを「まんま使った」運転代行業者の法的問題は?
アニメ化もされた漫画『みどりのマキバオー』や『モンモンモン』などの作品を手がけた漫画家、つの丸さんが自身のX(エックス)で、マキバオーのイラストや名前を無断で使った運転代行業者の写真をアップ。「ロゴ、イラストまんま使って超絶アウトでビックリした!!」と驚きを示した。 【全体画像】マキバオーだけでなく人気キャラも利用されていた
●んあ~ 超絶アウトなのね~
つの丸さんは10月23日、「運転代行マキバオー」と称する運転代行業の車の写真をアップ。さらに、この業者のものと思われるインスタグラムの画像も投稿した。 「マキバオー」のロゴだけでなく、主人公の馬「ミドリマキバオー」やライバル馬「カスケード」らのキャラクターイラストが使用されていた。代行サービスの宣伝だが、つの丸さんが「アウト」と言うからには、許可を得ていない「無断利用」とみられる。 X上では「コラボかー、って思ったら丸パクリだった」とあきれた声が寄せられている。 『みどりのマキバオー』は今年で連載30周年を迎える。今回の代行業者の行為には、どのような法的問題があるのだろうか。知的財産権にくわしい坂野史子弁護士に聞いた。
●『運転代行マキバオー』の名前のサービスは「品質誤認表示」にあたるのか?
――運転代行業者が「運転代行マキバオー」の名称でサービスを提供することに法的問題はあるでしょうか サービスの名称を保護するものとして、商標権・不正競争防止法2条1項1号、2条1項2号の商品等表示があります。 商標とは、事業者が、自己(自社)の取り扱う商品・サービスを他人(他社)のものと区別するために使用するネーミングやマーク(識別標識)です。※1引用元(政府広報「知っておかなきゃ、商標のこと!商標を分かりやすく解説!」2024年11月6日参照) ネーミングやマークと商品・役務(サービス)と組み合わせて特許庁に出願し、登録することで商標権が発生します。第三者が同一または類似の商標を同一または類似の商品・役務(サービス)で使用している場合、差止めや損害賠償を請求することができます。 また、不正競争防止法の商品等表示とは、「人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するもの」(不正競争防止法2条1項1号括弧書き)です。周知性・混同(同2条1項1号)、著名性(同2条1項2号)など、一定の要件を満たすと、特許庁への登録がなくても第三者への差止めや損害賠償の請求が認められます。 「みどりのマキバオー」は漫画のタイトルで、商標や商品等表示とは認められないと思いますので、そもそも商標法の保護の対象にならず、また商品等表示とは言えないので、商標法や不正競争防止法2条1項1号・2号による保護は難しいと思います。 一方で、不正競争防止法2条1項20号 には、商品もしくは役務(サービス)の内容などについて誤認させるような表示をして、その役務(サービス)を提供する行為など(いわゆる品質誤認表示)を不正競争とし、差止め・損害賠償の対象としています。 「運転代行マキバオー」の名称でサービスを提供することが、品質誤認表示にあたるかどうか、一応検討の余地はあります。 しかし、運転代行業者が「運転代行マキバオー」の名称でサービスを提供しているからといって、漫画家・つの丸さんの「みどりのマキバオー」に関連するような品質のサービスだと誤認する人はおそらくいないと思いますので、なかなか難しそうです。 なお、「マキバオー」という名称自体は短く、通常は著作権法で保護される著作物にあたらないので、著作権法による保護も難しいといえると思います。 一方で、マキバオーの独特のフォントが「思想又は感情を創作的に表現したもの」として、著作物にあたるとすれば、これを複製(コピー)等したり、インターネットで配信(公衆送信)したりする行為は著作権の侵害になる可能性があると思います。 ただし、フォントに著作物性が認められるハードルは、かなり高いので、本件では著作権法での保護はやはり難しそうに思います。