J1首位・町田の強さはデータに潜む Jリーグがデータページ刷新の理由 日本の「デュエル王」も誕生へ
Jリーグは今シーズンより、公式サイト「J.LEAGUE.jp」の成績・データページを大幅に刷新し、140種類以上のプレーデータをランキング形式で掲載している。なぜJリーグは、ここまで詳細なデータをファンに提供し始めたのか。Jリーグ事業マーケティング本部の高田佑平氏、マルチメディア事業本部・デジタルアセットメント事業部の山下航平氏に聞いた。(取材・構成=金川誉) 5月27日、JリーグのSNSでこんなデータが紹介された。 「1試合平均得点数 1・7」1位 「クリーンシート(無失点)総数 7」1位 「1試合平均1vs1(1対1)勝利数 18・6」1位 「1試合平均パス数 313・1」20位 「平均ボール支配率 42・7」19位 これはJ1リーグで首位に立つ、町田のデータだ(5月27日時点)。1対1でボールを奪い、少ないパスでシンプルにゴールに迫る町田のスタイルを、わかりやすく示していた。 Jリーグはデータスタジアム社と連携し、以前より海外向けサイトでは数々のデータを公開していた。その中で日本語サイトにおいても、今シーズンより充実したデータの提供を開始した。サイトの構築に尽力する高田氏は言う。 「データを見ることで、今J1首位の町田は何でこんなに強いのか、という部分がわかる点もあります。パスは少ないけど、1対1が強くて、得点も奪えている。コアファンは見て、すごくおもしろいのではないかと。また試合は主に週末ですが、それ以外のところでJリーグとの接点を増やすきっかけになるのでは、というところが(サイト刷新)理由の一つです。さらに海外サッカーファン、日本代表ファンにも、わかりやすくJリーグの魅力を伝えることができるんじゃないか、と考えています。新しいファンの方々に、どの選手を見ればいいのか、など知ってもらうきっかけにしていただき、新規ファン獲得のきっかけとしたいと考え、今回のリニューアルになりました」 冒頭に記したようなチームに関するデータのみならず、個人のデータも多数、紹介されている。昨季までは得点数、走行距離など数点が示されていたが、今季は計82種類(J1)にも及ぶ。「デュエル勝利総数※」「こぼれ球奪取数」などのデータに加え、スプリントだけでもボール保持時、非保持時など8種類のデータがあり、選手達のプレースタイルや見えにくい部分の貢献を知ることができる。 デュエル勝利総数では、町田と勝ち点で並ぶ2位・鹿島のMF知念慶が、75回でJ1首位に立っている。今季FWからボランチに転向した知念が、中盤での攻防が多い新ポジションにフィットしていることがわかるデータは、サポーターの間で話題となっている。山下氏は「データ系のコンテンツは反応がよく、SNSで議論が起こることがあります。自由な議論が起こってくれることは、Jリーグとしてもすごくいいことなのかなと感じます」と語る。 ファンに向けたデータ公開は、イングランド・プレミアリーグやドイツ・ブンデスリーガでも行われている。シュツットガルト時代の日本代表MF遠藤航(現リバプール)が“デュエル王”に輝き、1対1で勝利することの重要性が日本にさらに浸透するきっかけとなった。Jリーグでも今オフには“デュエル王”が誕生し、さらに注目が集まるきっかけになるはずだ。 またJリーグのデータを、ファンが知ることができるようになり、海外とJリーグの比較も容易に行えるようになった。たとえばトップスピードは、今季のJ1では鹿島MF藤井智也が記録した35・4キロが最速。一方でドイツ・ブンデスリーガではバイエルンDFアルフォンソ・デービスの36・41キロで、藤井の記録は同リーグでは21位に相当する。これまでぼんやりと感じていた差をはっきりと可視化されたデータで知ることは、さらにファンの目を肥えさせていくきっかけにもなりうる。 ページのリニューアルにより、1か月当たりのデータページのPV数は以前より約2倍に増加したと言う。既存のファンがよりJリーグを楽しみ、新たなファンがJリーグを見るきっかけ作りとして、始まった“データ革命”。サッカーはデータだけで語ることができるわけではないが、データから見えるものも確かにある。Jリーグの選手やクラブ、そして日本サッカーがさらに進化していくためのヒントは、データのなかに潜んでいるのかもしれない。 ※デュエル勝利総数の定義=空中戦を除く1対1での勝利総数で、ドリブルで抜いた回数+タックル数をカウント。ドリブルについてはかわした回数はカウントせず、タックルについては自チームのボールとならなかった場合もカウントする。
報知新聞社