〈日本版ライドシェア解禁〉アプリの評価制度で「マナーの悪い客」と「親切でないタクシー運転手」が淘汰される日がやってくる? 今後期待されるシームレスなサービスとは
日本では4月から、客を自家用車で有料で運ぶライドシェアがようやく一部解禁となったが、海外に比べるとかなり遅れをとっていることは否めない。ダークツーリズムの第一人者である井出明氏が、世界各国でのライドシェア体験を綴る。 【画像】フィリピンにおけるライドシェアアプリ「Grab」の運転手表示例。名前だけでなくランキングもわかる
アプリで顧客人気ランキングも一目瞭然
今年4月から自家用車で客を有料で運ぶライドシェアが一部解禁となった。ただ、ライドシェアはドライバーが一般人のため、安心、安全面で不安が残るという声があるのも事実だ。 そのため、日本ではライドシェアは白タク行為と呼ばれ、道路運送法で禁止されてきた。とはいえ、私の海外体験からいえば、ライドシェアはさほど悪いものではない。 20世紀の終わりごろから海外に出るようになってほぼ四半世紀になる。観光の研究にフォーカスするようになって、その機会は非常に増えたが、コロナが流行するまで、私の海外旅行の思い出といえば、白タクを含めたまさに世界中のタクシー運転手たちとの戦いの歴史であった。 タイでは目的地とぜんぜん違うところに連れて行かれたし、ポルトガルでは意図的に遠回りされ、ロシアでは誘拐されかけるなど、タクシーに関してはあまりいい思い出はない。 日本国内でも、乗車拒否はもちろん、渋滞が見込まれると突然ここで降りろと言われたり、目的地が近いとわかったとたん運転手の態度が露骨に悪くなるなどの嫌な思いをしたユーザーは多いだろう。 客としては文句の一つも言いたくなるものの、国土交通省は、運転手をクレームから守るという趣旨で、公共交通における匿名の運行を進めるようだ。日本のタクシーでは見慣れた助手席の向かいにある運転手のネームプレートも、時とともに消えゆく運命にあるのだろう。 だが、これは世界のライドシェアアプリの向かう方向性とずれているように感じる。ライドシェアアプリの多くは、運転手の顔写真と名前が明記されており、顧客人気ランキングも一目瞭然となっている。 ライドシェアアプリのドライバーたちは、名前を背負うからこそ仕事に真摯に向かうところがあるようで、匿名化される日本の公共交通サービスが良い方向に向かうのかはまだわからないといえる。