伊藤詩織さん初監督作品、元代理人が変更求める「ズタズタにされた気分です」 制作会社は「素材の権利処理は一任」と説明
性暴力被害を公表したジャーナリスト・伊藤詩織さんの初監督作品『Black Box Diaries』をめぐり、無断で映像や音声が使用されているとして、伊藤さんの元代理人らが「取材源の秘匿が守られていないなど人権上の問題もある」などと映画の内容変更を求めている。 【写真】並び合う伊藤詩織さんと西廣弁護士(2017年) 伊藤さんの元代理人、西廣陽子弁護士は10月21日、都内で記者会見を開いて、映画に「裁判以外の場では一切使用しない」と誓約したうえで提供されたホテルの防犯カメラ映像などが使われていると説明した。 この映像は、伊藤さんが2017年に提訴した性被害の損害賠償訴訟で証拠として提出され、伊藤さんは勝訴した。 自身の会話も無断で使われたという西廣弁護士は「防犯カメラ映像はホテルの物です。彼女の物ではありません」「訴訟のルールにのっとって提出されたものを目的外に使用してルールを破れば、今後起きうる訴訟への影響、特に証拠の少ない性被害における証言や防犯カメラ映像を提供する協力者がいなくなってしまうのではないかと、大変危惧しています」などとコメントしている。 西廣弁護士らによると、映画の制作会社から2024年1月、一度は「防犯カメラ映像を...使用しない方向で、すでに対策を検討中です」と連絡を受けたものの、7月のメディア向け上映会で承諾のないまま映像や音声が使用されていることを知ったという。 その後も伊藤さんと制作会社と協議したが、承諾のない状態で上映されたと主張している。
「この映画をみて、本当に暴力を振るわれたようでした。弁護士なので感情的なふるまいは慎むようにしてきましたが、正直、ズタズタにされた気分です。8年半の間、彼女がこれ以上傷つけられないために、彼女の名誉を守り、彼女のプライバシ ーを守るため、あちこちに出向き、頭を下げ協力を求めることもしてきましたが、彼女と私との電話の会話が無断録画されている映像を目にし、『私の気持ちは通じていなかったんだな』とただ大きな虚しさだけが私の心に残りました」 このような失意を明らかにする一方で、西廣弁護士は「この話と彼女の裁判は別問題であって、詩織さんの性被害についての誹謗中傷はやめてください」とも呼びかける。
●制作会社「素材の権利処理はすべて伊藤さんに任せている」
西廣弁護士らの主張について、制作会社と伊藤さんに見解を尋ねた。 制作会社のスターサンズは「素材の権利処理については、プロデューサー兼監督である伊藤詩織さんにすべてお任せしておりますので、弊社からコメントできることはありません」と回答した。 伊藤詩織さんには、公式サイトを通じて問い合わせている。