ロシア軍、クルスク州で「キルゾーン」にはまり損害続出 指揮官の偽情報も一因か
軍事ブロガー「現地司令部がまた嘘をついた」と指弾
ロシア軍のこれらの車両の乗員は、不正確な情報に基づいて行動していた可能性もある。第810海軍歩兵旅団が7日にポグレブキ周辺で行った攻撃について考えてみよう。ドローンからの映像には、同旅団のBTR-82装甲兵員輸送車数両が、塹壕にこもるウクライナ軍側から近距離で爆破される様子が映っている。 エストニアのアナリスト、WarTranslatedが紹介・翻訳しているところによると、ロシアの軍事ブロガー、ロマノフは「映像に見えるものは、現地司令部が参謀本部にまた嘘をついた結果だ」と批判している。第810海軍歩兵旅団の指揮官たちは、ポグレブキを通る道路をロシア側が掌握していると上層部に伝えていたという。「この情報を受け取ったあと、参謀本部は当然、この村への強襲を命令した」とロマノフは書いている。 実際にはロシア側はこの道路を掌握していなかった。ウクライナ軍によって敷設された地雷が残っていたが、ロマノフによれば第810海軍歩兵旅団の誰も、BTRを突入させる前に地雷を除去しようとはしなかった。 こうした問題は、近傍のほかの部隊はともかく第810海軍歩兵旅団では組織的なものだ。ロマノフは同旅団の司令部について「虚偽の情報を参謀本部に意図的に上げるのが常習的になっている」と指摘している。 クルスク州方面のロシア軍指揮官の一部は、間違った情報を上にあげてそれが指揮系統を通じて下に伝わるようにして、末端の部隊を血みどろの戦術的失敗に陥れている。だからといってロシア軍がクルスク州で負けるということにはならないが、戦いの最終的な結果がどうであれ、ロシア側はおそらく途方もない数の人的損害を出す公算が大きい。 ロシア側の最大の強みは数の多さだ。ロシアは援軍の北朝鮮部隊を含め、5万人規模の兵員をクルスク州に配置しているとされる。対するウクライナ軍は総勢2万~3万人とみられる。ロシアはこの数的優位を頼みにすることになるだろう。ロシアの政権はクルスク州の突出部の排除に高い優先順位を与えており、その過程で大勢のロシア兵の命を犠牲にするのもいとわない姿勢なのは明らかだ。