総勢43名が登壇! 新国立劇場『デカローグ1~10』制作発表会見
新国立劇場が、『トリコロール』三部作(青の愛/白の愛/赤の愛)、『ふたりのベロニカ』で知られるポーランドの映画監督、クシシュトフ・キェシロフスキによる十遍の連作集『デカローグ』を完全舞台化、2024年4月から7月まで連続上演する。3月11日に同劇場で実施された制作発表会見では、総勢43名ものスタッフ、出演者が集結、前代未聞の挑戦的な大プロジェクトであることを印象付けた。 【全ての写真】新国立劇場の演劇『デカローグ1~10』制作発表会見より 旧約聖書の十戒をモチーフに、1980年代のポーランドワルシャワのある団地に住む人々を描くオムニバス形式の作品。それぞれが独立した1時間程度の作品ながら、同じ人物が物語を超えて登場するなど、緩やかに繋がってゆく。元はテレビ映画用に撮影されたが、のちに映画化、スタンリー・キューブリックらが絶賛したことも知られる。 はじめに作品への思いを打ち明けたのは、翻訳を手がけた久山宏一。ポーランド留学時代の『デカローグ』との出会いを振り返りつつ、「キェシロフスキは当初、十人の若い監督を『デカローグ』でデビューさせる計画でした。今回の舞台化は、日本の若い才能ある舞台人たちによる脚本の再解釈という意味で、キェシロフスキの意図の実現ともいえるかもしれません」と感慨深げ。また上演台本を手がけた須貝英は「映画ファンの方たちを失望させてはいけないというプレッシャーを感じつつ、舞台の脚本にしなければいけない。試行錯誤もかなりしたと思います」と明かした。 演出は、新国立劇場演劇芸術監督の小川絵梨子と、上村聡史が分担する。「キェシロフスキ監督はたくさんの人々の存在を通して、人間が存在することへの根源的な肯定を書かれた。とても大事なテーマだと思います」という小川。上村は「脚本は、非常に緻密に計算されている。ヨーロッパでは『デカローグ』を演劇化したプロダクションも多く、物語力ある作品だと思います」と語った。 続いて、各プログラムの出演者たちが、それぞれの物語や見どころ、意気込みを述べた。 ■プログラムA:4月13日(土)~5月6日(月・休)、プログラムBとの交互上演 デカローグ1「ある運命に関する物語」演出:小川絵梨子 12歳の息子と暮らすクシシュトフを演じるノゾエ征爾は、「実生活でも息子に対する眼差し、気持ちが変わってきた」。その姉イレナ役の高橋惠子は、「台本を読み終えて、しばし呆然としました。お客さまにも心を動かしていただけるよう稽古を重ねたい」。 デカローグ3「あるクリスマス・イヴに関する物語」演出:小川絵梨子 「過去に不倫関係であった男女が、行方不明になった彼女のパートナーを探しに行く。お互いに抱えている孤独を確認し合う話だと思って稽古しています」と語ったのはヤヌシュ役の千葉哲也。元恋人のエヴァを演じる小島聖は、「感情を表面に出すのは簡単ですが、それをいかに出さずにキープしたまま突っ走るか、一生懸命探っています」と明かす。 ■プログラムB:4月13日(土)~5月6日(月・休)、プログラムAとの交互上演 デカローグ2「ある選択に関する物語」演出:上村聡史 自身が演じるドロタのことを「夫は入院中。愛人の子をみごもっており、大きな選択を前に葛藤している」と前田亜季。医長役の益岡徹は、「大きなプロジェクトですが、スポットが当たるところは小さい。大きな団地に行ってちょっと覗いてみる、という面白さがあると思います」。 デカローグ4「ある父と娘に関する物語」演出:上村聡史 娘とふたり暮らしのミハウを演じる近藤芳正。「娘を持つ役を意外といっぱいやっているので、パーフェクトな部分があるかと(笑)」と場を和ませる。娘・アンカ役の夏子は「一通の手紙によって、親子の関係がどう変わっていくのか。繊細なやり取りを楽しんでいただけるよう頑張りたい」と意気込んだ。