総勢43名が登壇! 新国立劇場『デカローグ1~10』制作発表会見
「重ねていくと壮大な絵になる」全篇上演の意義
■プログラムC:5月18日(土)~6月2日(日) デカローグ5「ある殺人に関する物語」演出:小川絵梨子 「タクシー運転手を殺害してしまう青年・ヤツェクと、死刑制度に反対する新米弁護士。全く出会うはずのなかったふたりが交わってしまう物語。舞台上でヤツェクとして生きることができるのが楽しみ」と話す福崎那由他。弁護士・ピョトル役の渋谷謙人は、「劇中で触れられる死刑制度。少しでも関心を持っていただければ」。 デカローグ6「ある愛に関する物語」演出:上村聡史 「郵便局員の青年・トメクは、向かいに住むマグダを日々望遠鏡で覗いている。見返りを求めない愛を信じないマグダの心は、徐々に変化していきます」と、マグダを演じる仙名彩世。トメク役の田中亨からは、「郵便局にマグダが来て、そこからどんなふうに愛の物語になっていくのか。見応えのある作品だと思います」。 ■プログラムD(6月22日(土)~7月15日(月・祝)、プログラムEとの交互上演) デカローグ7「ある告白に関する物語」演出:上村聡史 「(両親と同居している22歳の女性)マイカが生んだ子供を、マイカの母が娘として育てている家庭。マイカはそこから娘を連れてカナダに逃げようとする──。海外の戯曲は初ですが、全力でのぞみたい」と打ち明けたのはマイカ役・吉田美月喜。娘の父親・ヴォイテク役は章平。「“ただ、生きる”を目標に稽古に励みたい」。母を演じる津田真澄は「行く末がすごく気になる家族。緊迫したシーンが多い」とほのめかす。 デカローグ8「ある過去に関する物語」演出:上村聡史 「辛く重い過去を持つ者たちが過去と向き合いながら生きてきて、また改めてその過去と向き合ったり、話したり話せなかったり、という物語。人間は、会って話をすることがすごく大事だなと思います」と、大学教授ゾフィア役の高田聖子。その聴講生・エルジュピタ役の岡本玲は、「十篇の話の、作品の繋がりを大切にしながら演じたい」。 ■プログラムE(6月22日(土)~7月15日(月・祝)、プログラムEとの交互上演) デカローグ9「ある孤独に関する物語」演出:小川絵梨子 伊達暁が演じるのは40代の心臓外科医・ロマン。性的不能と診断され、「妻はそれを受け入れるも、妻には若い学生の不倫相手が──。もやもやした内面を、どう舞台上に現出させることができるかがテーマ」と意欲的。妻・ハンナ役の万里紗は、「パートナー同士が相手の弱さや恐れをまるで鏡のように映し出す、その様は滑稽で、リアリティがある」。不倫相手のマリウシュ役・宮崎秋人は「まっすぐに愛していけたら」。 デカローグ10「ある希望に関する物語」演出:小川絵梨子 竪山隼太演じる弟のアルトゥルと石母田史朗演じる兄・イェジーは、父の死により久しぶりに再会。「兄と一緒に、父の住んでいたフラットを訪れ、父が膨大な切手のコレクターであることに気づく。切手1枚に莫大な価値があることが判明して、という人たちの話です」と竪山。石母田は「切手の価値を知り、それに固執していく様はものすごく滑稽。興味深く感じています」と語った。 最後は、ただひとり、全編に出演する亀田佳明。「天使役です。演出は、ごまかしのない表現を要求するという意味では本当に“しつこい”ふたり(笑)。強度のある作品になっていくのではという予感がしています」とコメントした。 質疑応答の場で、この作品の「根源的な肯定感」に改めて触れた演出の小川。「1枚1枚の絵が素晴らしい、が、1、2、3……と重ねていくと、また1個壮大な絵にもなるという仕掛けになっていると思います」と、全篇上演の意義をアピールした。開幕は4月13日(土)、東京・新国立劇場小劇場にて。 取材・文:加藤智子 <公演情報> 新国立劇場の演劇『デカローグ1-10』 2024年4月13日(土)~7月15日(月・祝) 会場:東京・新国立劇場 小劇場