シンボルマークと屋号を披露する成原村長（左）と渡辺社長（岐阜県白川村で）

　酒蔵が現存していない白川村に、渡辺酒造店（飛騨市古川町壱之町）が新しい酒蔵をつくることになった。村と同社が協定を結び、2026年9月の稼働を見込んでいる。 　村には和銅3年（710年）から続くとされる神事「どぶろく祭」があるが、民間の酒蔵は100年以上前に途絶えたといわれている。また、村ブランドの独自産品が少ないことも課題になっていた。 　日本酒好きを公言する成原茂村長が、村民が誇れる「村の自慢の酒」を造ろうと決意。酒蔵を起点にして産業振興を図り、雇用の促進、特産品化によるブランド価値向上などで村の課題解決につながると考え、20年に同社の渡辺久憲社長に思いを伝えたところ、協力の快諾を得られたという。22年からは、同村産の酒造好適米（酒米）「山田錦」と村の水を使った日本酒を製造、販売している。 　村と同社の「酒蔵進出に関する地域活性化協定」の締結式が1日、村役場で行われ、酒蔵の概要が発表された。建設予定地は同村鳩谷の旧村立白川小学校跡地。鉄骨2階の建物で延べ床面積は約1900平方メートル。1階に工場やショップ、2階に見学コーナーを設ける。酒蔵には「白川村の蔵」という屋号を付ける。 　建設費、用地取得費など総事業費は10億円余り。およそ半分を村が負担する。村は企業版ふるさと納税やふるさと納税を活用したクラウドファンディング（CF）などで資金を募る予定。原料の酒米（山田錦）の一部に同村産を充てる。水は酒蔵の敷地内に井戸を掘って使う。 　渡辺社長によると、輪郭はしっかりとあるが、飲み飽きしない“芳醇辛口”の飲み口になりそうという。「世界遺産の白川村でつくる日本酒。日本を代表する酒、世界に通用する酒を造るため、挑戦していく」と意気込みを語った。