災害時の道路復旧計画策定へ 東北整備局、福島県と連携
東北地方整備局は本年度、県などと連携し、災害時にがれきなどを撤去し、緊急車両の通行を可能にする道路の優先順位や作業手順を定める「道路啓開(けいかい)計画」を策定する。東日本大震災を踏まえて国が策定を求めてきたが、本県を含む東北ではいまだ策定が進んでいない。1月の能登半島地震では道路の寸断が相次ぎ、被災地支援や復旧に影響が出たとの指摘があり、整備局や県は計画策定を通じ、大規模災害時の迅速、円滑な対応につなげたい考えだ。 道路啓開は、災害時に最低限のがれき撤去や段差補修を実施し、緊急車両が通行できるルートを確保する作業。東日本大震災の際には、国土交通省の主導で内陸部を縦断する東北道と国道4号の通行を確保した上で、沿岸部に向けてくしの歯状に延びる幹線道路の開通を進めた。 整備局によると、この「くしの歯作戦」により、発災から1週間で沿岸部を南北に走る国道の97%が通行可能になった。ただ、事前に計画があればより円滑に作業が進んだとの指摘もあり、2011年12月に内閣府の防災基本計画に啓開計画策定が盛り込まれた。 しかし東北では震災からの復旧・復興事業を優先してきたことなどから策定が進んでこなかった。北陸など他地域でも未策定だったため、総務省は昨年4月、国交省に対し、各地の地方整備局が中心になって策定を急ぐよう提言。同11月には東北地方整備局と東北6県、各県の県警や県建設業協会などでつくる協議会が設置された。 協議会では、くしの歯作戦が有効だったことを踏まえ、最新の道路状況や災害予測を計画に反映する方向で検討が進んでいる。内陸部の直下型地震など、くしの歯作戦が使えない場合の対応も盛り込む方針だ。県によると、本県では県や市町村の地域防災計画に優先的に啓開作業を行う路線が盛り込まれているが、啓開計画では復旧を優先する対象路線や作業手順を明確に示すことになる。 能登半島地震では各地で起きた道路の寸断により、孤立集落の解消に1カ月以上かかった。国交省の社会資本整備審議会の部会が6月に取りまとめた緊急提言では「計画を事前に準備しておくことで災害対応の実効性をより向上させることが可能だ」と指摘した。県は「迅速な道路啓開には事前の準備が重要。災害はいつ、どこで起こるか分からないので、地域防災計画との整合性を取りながら啓開計画の策定を進める」(道路管理課)としている。 ◇ 道路啓開計画 災害時に最低限のがれき処理や段差補修を実施することで、緊急車両を通行させるための計画。災害の想定、優先的に通行を確保するルート、作業の手順、必要な人材や資機材の確保方法などを盛り込む。
福島民友新聞