「ぬか」は微生物によって生きている 「味処 矢野」女将・矢野寿美子
黒木瞳がパーソナリティを務めるニッポン放送「黒木瞳のあさナビ」(1月16日放送)に「味処 矢野」女将の矢野寿美子が出演。ぬか床(ぬかみそ)について語った。
黒木瞳が、さまざまなジャンルの“プロフェッショナル”に朝の活力になる話を訊く「黒木瞳のあさナビ」。1月15日(月)~1月19日(金)のゲストは「味処 矢野」女将の矢野寿美子。2日目は、ぬか漬けのメカニズムについて― 黒木)ぬか漬けについて伺いますが、野菜をぬかに漬けて、ぬかに育ててもらうのですか? 矢野)実は、ぬか床のなかには微生物がたくさん住んでいるのです。その微生物を生かし続けるためには、えさをやる必要があります。私たちもご飯を食べたり水を飲んだり、塩や砂糖が必要ですよね。ぬかにいる微生物も人と同じく生きているので、えさを与えないといけない。でも、水や塩を入れるわけにはいかないので、炭水化物として野菜を与えるのです。野菜には繊維や糖分、ビタミンなど、いろいろな栄養素が入っているので、それをえさとして与えます。 黒木)きゅうりやトマトなどを。 矢野)野菜をあげて微生物を元気にすると、育った微生物が野菜にうま味成分をたくさん出し、付与してくれる。その美味しくなった野菜を私たちがいただくのです。 黒木)ぬかに育ててもらうことによって、野菜が美味しくなる。 矢野)「発酵熟成」という言葉があります。適温によって微生物が次の子どもを産む。例えば乳酸菌は乳酸を産み、酵母菌は酵母を産みます。それぞれ、えさがあれば活発に生き、美味しいうま味のもとをどんどん出してくれる。だから、漬けないと美味しくなりません。えさをやらないと菌が弱ってしまう。弱ったら美味しくないわけです。 黒木)では、まずぬか床をつくる必要があるのですか? 矢野)そうです。栄養のある微生物が元気なぬか床をつくらないといけない。 黒木)最初はどうやってつくるのですか? 矢野)大きく分類すると、ぬか自体は炭水化物なのです。ぬかには乳酸菌しか付いておらず、酵母菌は付いていません。でも、野菜には酵母菌が付いているから、野菜を入れることで酵母菌や乳酸菌など、いろいろな菌が育っていくのです。 黒木)お互いに育て合うのですか? 矢野)お互いにというよりも、乳酸菌はいちばん強い菌なのですよ。例えば腐敗菌などの悪い菌が出てくると、乳酸菌が押さえ込んでくれるのです。