“下克上”を狙うソフトBの工藤監督が元西武監督にかけた1本の電話
広岡氏の言う『形』とは、守りの野球である。 先発、中継ぎ、抑えを整備し、センターラインを中心に守りにミスの出ない布陣を固める。攻撃では、敵の隙を見逃さず、機動力の怖さで走者を進める野球だ。そして戦術は奇策を使わず基本を守る。 だがソフトバンクは、先発から和田が左肘の異常で離脱、中継ぎも崩れた。センターの柳田も右手親指を骨折、ラストの4試合はショートの今宮が右肘の“ねずみ(遊離軟骨)”で離脱するなどセンターラインも崩壊してしまった。そうなると広岡氏が指摘するような『形』を作ることは難しい。 工藤監督は、中継ぎに岩嵜を置くなど応急処置を施したが、『形』を作れないまま終幕を迎えた。 だが、クライマックスシリーズからは、柳田、今宮が復帰。岩嵜、スアレス、サファテで固めた7、8、9回のブルペンも完璧で、柳田には、まだ1本が出ていないが、広岡氏に教えられた『形』は生まれてきた。 「日ハムも若い選手を根気よく育て、外国人らとの戦力と、うまく合体させた。個人的に大谷の二刀流は気に入らないのだが」と、広岡氏は、日ハムにも評価を与えているが、自らが構築した西武野球の流れを継承しようとしている工藤監督に思い入れが出てくるのもしょうがないだろう。 “恩師”の訓話を受けたソフトバンクの工藤監督は、日ハムとのリベンジ戦で、どんな采配を見せるのか。振り返ってみれば、7月3日の日ハム戦で、「1番・投手」で起用された大谷に先頭打者アーチを浴びて0-2敗戦したゲームが、凋落の始まりだった。ファイナルステージの戦いも、大谷が先発してくる初戦の攻防が、シリーズの流れを左右することは間違いない。 (文責・駒沢悟/スポーツライター)