「解雇しやすい特区」って何?/木暮太一のやさしいニュース解説
政府は、この秋の臨時国会に「解雇しやすい特区」の法案を提出する方向で検討に入りました。この「解雇しやすい特区」とは、一体何なのでしょうか? 誰が対象で、どんな影響があるのでしょうか? ―――「解雇しやすいってことは、社員をクビにしやすいってことだよね?」 最終的にはそういうことです。ただ、社長が自由気ままに社員をクビにできるわけではありません。また、「特区」なので、全国を対象にしているわけではありません。政府が検討している案を見てみましょう。 ―――「なんで今こんな特区を作ろうとしているの?」 政府は「新しく会社ができないこと」「外国からの投資が少ないこと(※この場合の「投資」とは、外国企業が日本に進出する、という意味です)」を問題視しています。この状況を解決するために、“雇用制度上の特例措置を講ずる”=従業員を解雇する基準を緩やかにする、を検討しているのです。 ―――「どこの地域が対象なの?」 東京、大阪、愛知の三大都市圏などを特区に指定するようです。まずは都心部からということですね。 ―――「その地域の全員が対象なの?」 いえ、そうではありません。この特区内において ・できてから5年以内の企業の事業所 ・外国人労働者の比率が30%以上の事業所 とあります。全員ではないんですね。
「ずっと期間限定で雇う」が可能に
―――「ふーん。で、どんな内容が検討されているの?」 政府が考えている新ルールは大きく考えて3つです。 最初のルールは「ずっと“期間限定社員”を可能にする」です。 現在、1年契約、2年契約など期間限定で社員を雇うことが認められています。仕事がある時期(年)だけ限定で社員を増やすことができると言うことですね。そしてその期間が終わったら「今までお疲れさまでした。ではさようなら」といって、雇用契約が終わります。しかし、契約期間を更新などして、5年を超えた場合、労働者から“申込み”があれば正社員にしなければいけません。 特区では、その決まりをなくし、ずっと“期間限定”で雇うことを可能にするのです。 ―――「なんで5年たったら正社員にするの?」 “期間限定社員”は、経営者に有利、労働者には不利な契約だからです。経営者は、景気がよくて仕事がある時に社員をたくさん雇ってたくさん仕事をさせたいです。でも、景気が悪くなったら社員の人件費が負担になるので人を減らしたいです。だから期間限定の社員はとても都合がいいのです。 ただ、労働者から見れば、景気が悪くなったら切られるわけで、生活が不安定になりかねません。そこで5年を超えたら「実質正社員だよね?」ということで、労働者が希望すれば「無期雇用(終身雇用)」に切り替えなければいけないのです。 ただ、この「5年ルール」があることで、企業は経営がしづらくなります。またより重要な問題として、このルールがあることで、5年経つ前に(経営者にとって条件が悪くなる前に)契約を終了させられる労働者が続出するのです。 ―――「あ、なるほど……。」