自然の力を感じられる展示で五感を刺激しよう──週末カルチャーアドレス
「週末のカルチャーアドレス」では、いまチェックしておきたいアート&カルチャースポットを紹介。今週末は世界の庭を変えたガーデナーの仕事、そして雨に着想を得た香りの展示を巡ろう。 【写真を見る】ピート・アウドルフが手掛けた世界の庭をチェックする
植物の個性に目を向けて風景を作りだすピート・アウドルフの世界を知る
オランダのガーデンデザイナー、ピート・アウドルフは世界の庭を変えた人物だ。彼がランドスケープを手がけた「ハウザー&ワース・サマセット」「サーペンタイン・ギャラリー」「ベネツィア・ビエンナーレ」、そしてニューヨークの「ハイライン」やシカゴの「ミレニアムパーク」をはじめ、その考えは世界に広がっていった。 装飾的で植物を資源のように費やす庭から、土地固有の植物を庭に持ち込み、野草や多年生植物、灌木などを取り入れた様式化されていない庭へ。冬になるとその枯れた姿まで、私たちに生命の美しさを教えてくれる。そのアウドルフの仕事を取り上げた展覧会がいま、竹中工務店東京本店ビルの中にあるギャラリーエークワッドで行われている。展示のサブタイトルは「いのちがめぐる庭」。 アウドルフ自身は、自分を先駆者だとは思っておらずただの庭師だという。野生の特徴と魅力を取り入れながら、やはりその庭は綿密に計画されたものだ。それは彼が植物の長所や短所、開花時期、ライフサイクルをよく知るからにほかならない。それらをバランスよく配置することで、一年を通して楽しめる風景が生まれる。人は植物を単体で見がちだが、それらは集って植生をなすものだとアウドルフはいう。それは人となんら変わらない。それぞれに個性を宿した植物を通して世界を構築するその魅力を、ぜひ会場で感じてほしい。 「ピート・アウドルフのナチュラリスティックガーデン ―いのちがめぐる庭―」 会期:7月11日(木)まで 会場:GALLERY A⁴(ギャラリー エー クワッド) 開館時間:10時~18時(土曜、最終日は17時まで) 休館日:日曜・祝日 入館無料
雨の余韻で記憶と感性をくすぐるTHREEのインスタレーション
本格的な夏の訪れを前にやってくる梅雨。それは植物や大地にとって恵みをもたらす存在だ。初夏、雨上がりの道を歩くと木々や土の力強い香りが漂うのを感じることがあるだろう。それは人の記憶や感情をくすぐる存在だ。ライフスタイル ビューティブランド、スリー(THREE) は自然のエレメントをインスピレーションソースとするフレグランス「エッセンシャルセンツ」を展開している。これは合成香料を使わずに熊本県南阿蘇の無農薬ハーブ農園で育てたゼラニウムから抽出した精油をはじめとする、天然精油のみで香りを構築したものだ。新作「05 AFTER THE RAIN」は雨の恵みを抱えた潤いの大地、「06 TASTE THE AIR」は雨上がりの余韻を表現する。 その発売を機に移動式インスタレーション「THE ROOM OF(IN)SCENTS」を開催中だ。会場を手がけたのはデザイナーの山本大介。彼は内装の下地材として用いられ、その解体時に処分されてしまう軽量鉄骨(LGS)の再活用に取り組むプロジェクト「FLOW」に取り組む。今回ははじめて軽量鉄骨を用いた、組み立てと解体が可能な箱型の空間を設置。仕組みごと巡回を続ける。「THREEの製品が有機的な素材を扱うに対し、展開されているショップは無機的な佇まいが特徴的です。ここではそれを踏襲しながら空間を構築しました」と山本。このインスタレーションを通じて、新作のテーマ「BEYOND THE RAIN(森羅万象、 雨の余韻)」にまつわるアートを香りとともに体験できる。 現在、VISIONARIUM THREE SHIBUYAで開催中の展示ではブックディレクターの有地和毅氏が新作の香りにインスピレーションを得た、小説、詩、エッセイをセレクト。空間内では詩人の菅原敏による朗読を音声コンテンツとして聴くことができる。7月10日からは会場をシボネに移し、写真家の原田教正がフレグランスの着想源を感じさせる作品を展示する。雨の多い季節だからこそ、その魅力にあらためて向き合うインスタレーションを楽しみたい。 「THE ROOM OF (IN) SCENTS」 THE HEARING 住所:東京都渋谷区神宮前6丁目20-10 MIYASHIYA PARK North 2F VISIONARIUM THREE SHIBUYA 会期:6月20日(木)~7月9日(火) 営業時間:11時~21時 会期中無休 THE SIGHT 住所:東京都渋谷区神宮前5丁目10-1 GYRE B1F CIBONE 会期:7月10日(水)~16日(火) 営業時間:11時~20時 会期中無休 キュレートと文・山田泰巨 編集・遠藤加奈(GQ)
山田泰巨