新型ロータス・エメヤはとんでもない超高性能セダンだった! 最高出力918psの世界とは
ロータスのずば抜けた技術力
エメヤSは前後に1基ずつモーターを搭載し、最高出力は612ps、0~100km/hを4.2秒、最高速度は250km/hに達する。ちなみにバッテリー容量は102kWhで、航続距離は540km。なかなかのハイパフォーマンスEVだ。 しかし、走らせてみると、そんな高性能ぶりが信じられないくらい乗り心地は快適。しかも、スロットルペダルを多少乱暴に踏み込んでも、どこかのハイパワーEVのように背中がのけぞるような加速を示すことはなく、スムーズな走りに終始する。この辺は、とても大人な味付けで好感が持てる。 だからといってエメヤSが速くないかといえば、そんなことは決してない。試しに速度無制限区間のアウトバーンで全開加速を試してみると、100km/hまでとほとんど変わらない勢いで150km/hに到達。そこからも加速の勢いは鈍ることなく、200km/hを軽々と超え、文字どおりあっという間にスピードリミッターの効く250km/hに達した。その、200km/hオーバーでも加速感が衰えないパワフルな走りは、私にとって未経験の世界。しかも、そうした高性能を、なんの恐怖感も覚えさせずに実現させてしまうあたりに、ロータスのずば抜けた技術力と品のいいセンスを見たような気がした。 オーストリアからミュンヘンに向かう復路では最高出力918psのエメヤRに試乗。こちらは0~100㎞/h加速、2.8秒とまさにスーパースポーツカー並みの加速感だが、そのダッシュ力にどこか品のよさが漂っている点はエメヤSとよく似ている。快適性の高さも素晴らしい。 ただし、全開加速を試したとき、エメヤSと違ってスタビリティに物足りなさを感じたのも事実。このあたりは、エメヤRのあり余るパワーのなせる技かもしれない。ちなみに、前後モーターのトルクが50:50のエメヤSに対して、エメヤRはおよそ33:67とリヤ重視の設定となっているので、限界域のコーナリングでは後輪駆動に近いダイナミックな走りを楽しめるはず。その意味では、よりサーキット向けのモデルといえるかもしれない。 いずれにしても、ドライバーの操作に対してどんなときでもリニアに反応してくれるエメヤは、ロングクルージングやスポーツドライビングだけでなく、日常遣いにも安心して使える高性能EVであることは間違いない。 その点、オーナーシップがどれだけ変わっても、ロータスの伝統はエメヤにも見事に息づいているといえるだろう。
文・大谷達也 編集・稲垣邦康(GQ)