G7、中ロと対立鮮明 ウクライナ支援で結束 「内憂」で継続見通せず〔深層探訪〕
15日閉幕したイタリアでの先進7カ国首脳会議(G7サミット)。ロシアの侵攻が続くウクライナを巡り、G7と中国・ロシアとの対立構図が鮮明となった。G7はウクライナ支援で新たな方針を打ち出したものの、各国首脳は「内憂」を抱えており、共同歩調を続けられるかは不透明だ。 【地図で見る】ウクライナ戦況マップ 「西側の意思統一で、ウクライナの自由を守る支援を保証する」。議長を務めたメローニ伊首相は13日の記者発表で「成果」を強調した。 ◇見透かすロシア ウクライナ支援で、G7はロシアの凍結資産を活用し、500億ドル(約7兆8500億円)規模を融資することで合意。軍事転用可能な物資をロシアに輸出しているとされる中国にも深刻な懸念を表明した。結束してウクライナを支える姿勢を示したが、事態の収束に効果的な手だてを見いだせていない。 ロシアのプーチン大統領は即座に反発し、「ロシア資産の窃盗だ」として報復措置を警告した。G7の苦悩を見透かすかのように、プーチン氏は5月に訪中し、習近平国家主席と連携をアピール。武器支援を受ける北朝鮮も近く訪問する。 ロシアはサミットに先立つ10日から、新興国グループ「BRICS」外相会議を主催。「日米欧」と中ロの対立構図から距離を置く新興・途上国「グローバルサウス」との近さを誇示した。 G7に対する新興・途上国の同調は広がりを欠き、パレスチナ自治区ガザの情勢も国際社会の分断要因になっている。イスラエル寄りの立場を取る米国などに対し「二重基準だ」との批判が上がる。G7首脳はサミットで、バイデン米大統領が公表した新停戦案への支持を確認したが、日本政府関係者は「新興・途上国は米国から気持ちが離れている」と指摘する。 ◇トランプ氏の影 イタリアに集ったG7首脳が警戒するのは、11月の米大統領選だ。各国首脳は共和党のトランプ前大統領が返り咲いた場合、米国のウクライナ支援策が覆されかねないと身構える。 凍結資産の活用策では枠組みの合意を優先した。岸田文雄首相に同行した関係者は「今のうちに決めておかないといけなかった」と説明。日米外交筋は「米国政府にも、決められるものは決めておく狙いがあった」と語る。 今月の欧州連合(EU)欧州議会選挙では、移民やウクライナ危機以降のエネルギー価格高騰に対する不満から極右・右派勢力が伸長した。トランプ氏の主張は「支援疲れ」が指摘される欧州で受け入れられる素地がある。中国も、経済的結び付きをてこに欧州と日米の分断をもくろむ。 ◇首脳に選挙の洗礼 G7首脳には国内で試練が待ち受ける。7月の英総選挙では、スナク首相の与党の劣勢が伝えられる。フランスのマクロン大統領も国民議会(下院)の解散に踏み切ったが選挙での勝利は見通せない。大統領選を控えるバイデン氏、9月に自民党総裁の任期満了を迎える岸田首相も同様で、再選は確実視されていない状況だ。 日本外務省幹部が「国連安全保障理事会の機能不全で役割は増している」と指摘するG7。来年のサミットは顔触れが大幅に変わる可能性があり、結束維持に懸念も広がる。(ファサーノ時事)