<社会インフラを行く!>世界最長のつり橋「明石海峡大橋」
港や川で見かける「つり橋」、一体、何が何をつっているのでしょうか? 言うまでもなくケーブルが橋をつるしている“だけ”の話ですが、そのメカニズムとダイナミズムが見どころです。 神戸市と淡路島を結ぶ世界最長のつり橋が「明石海峡大橋」です。橋全体の長さは3910メートルですが、中央支間(2つの主塔間の距離)1991メートルが世界一です。土木技術者は、この中央支間の長さを競います。実は、施工途中でしたが、1995年の阪神淡路大震災による地盤変動によって1メートル長くなってしまいました。その後の点検と設計変更によって難なく完成に漕ぎつけたことは、橋梁(きょうりょう)史の武勇伝として長く語り継がれています。 この長大な橋をつるすのに大きな役割を担っているのが「アンカレイジ」と「主塔」です。橋の両端には「アンカレイジ」と呼ばれる巨大なコンクリート製のおもりがあります。直径が112センチメートルもある「超」がつくほど太いケーブルを、自分の重さと地面との摩擦力でがっちりとつかんで動くことがありせん。 そして高い塔が2つ見えます。これを「主塔」と言います。高さはなんと300メートル。東京タワーに匹敵する主塔に支えられ、太いケーブルがたわんでいますね。主塔にかかる重さを考えると気が遠くなります。このケーブルから垂れ下がる縦のロープが「ハンガーロープ」。このハンガーロープが世界一長い橋げたをつり下げています。そして鋼製の橋げたの上に道路が乗り、ようやく自動車が通行できるというわけです。 鋼材の集合体なのに柔らかいこの巨大構造物は、特に強い風に耐えられるよう入念に設計(耐風設計)がなされています。見るか、渡るか、船でくぐるか。それぞれに世界最長のつり橋のダイナミズムを体感したいものです。 (監修:吉川弘道・東京都市大学教授)