丁寧なあいさつは必要ない? ひと足早く「年賀状じまい」をしたライターが明かす友人や取引先からの「思いがけない反応」
年賀状を止めるには
さて、ニュースサイトでも数年前から話題に上っている年賀状じまいだが、今年はワイドショーでもたびたび紹介されるようになった。皮肉なことだが、年賀状じまいを通じて、年賀状が異常なほど盛り上がっている。なかには、「年賀状じまいの丁寧なやり方」などを紹介するマナー講師もいるようだ。 マナー講師の指導を仰ぐまでもなく、上手に年賀状じまいを行う方法は簡単である。キッパリと、出さなければいいのだ。わざわざ「来年からは年賀状を失礼いたします」などと、丁寧な文言を書いて、年賀状を出す必要はない。もはや多くの企業も個人も年賀状を止めているので、今さら来なくてもほとんどの人は気にも留めない。 筆者は切手コレクターということもあって郵便物が好きだし、郵便制度を守りたいという謎の信念ゆえ、年賀状を100通以上出していた時期があったが、ある年を境にキッパリと止めた。理由は単にめんどくさくなったためなのだが、その後も企業や友人との関係は問題なく続いているし、年賀状を出さなかった程度で関係性は壊れなかった。 そもそも、年賀状程度で揉め事になってしまったり、出す出さないで壊れてしまったりする人間関係もどうかと思うのだが、とにかく筆者の場合、誰も気にしなかったので拍子抜けしてしまった。世の中の心配事はほとんど杞憂で終わる。年賀状を出したくなくてたまらない人は、潔くもう年賀状を止めるのが吉である。
芸能人や漫画家への年賀状は喜ばれる
その一方で、年賀状が好意的に受け取られ、喜ばれる業界もある。それは、芸能界と漫画界である。アイドル、声優、芸能人は年賀状をもらって嬉しく感じない人はいないと思うし、漫画家は自身のキャラのイラスト入りの年賀状をもらうとたまらなく嬉しい。年賀状に対し、丁寧に返事を出す漫画家も多い。 先日、筆者が会った声優アイドルは「年賀状は貰えたら嬉しいですよ~」「ぜひ送ってほしい!」と語っていた。曰く、「ファンレターは必ず読んでいるし、SNSでメッセージをくれるよりも手紙を送ってくれる方が印象に残りやすい」のだという。その声優のマネージャーも、「20年前を比べたらファンレターが来る枚数が減少しているので、手紙は目立ちますよ」と話す。 しばし、声優や芸能人に高価なプレゼントを贈る人がいるようだが、もっとも喜ばれるのは心がこもったファンレターだ。筆者の妻は漫画家だが、ファンからの年賀状が編集部経由でたくさん届く。ライターの筆者に2枚しか来ないのとは対照的だが、漫画家に対するファンレターの文化は健在であるし、妻はファンレターを喜んでいる。 SNSでやり取りする機会が増えた今だからこそ、ファンレターをもらった芸能人や漫画家は喜ぶ。そういった意味では、年賀状は気軽に送りやすいし、タイムラグはあるもののしっかり事務所が転送してくれるので確実に本人の目に留まる。年賀状は、“推し活”をする人にこそおすすめできるアイテムと言っていいだろう。 山内貴範(やまうち・たかのり) 1985年、秋田県出身。「サライ」「ムー」など幅広い媒体で、建築、歴史、地方創生、科学技術などの取材・編集を行う。大学在学中に手掛けた秋田県羽後町のJAうご「美少女イラストあきたこまち」などの町おこし企画が大ヒットし、NHK「クローズアップ現代」ほか様々な番組で紹介された。商品開発やイベントの企画も多数手がけている。 デイリー新潮編集部
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