「占いのようなもの」…子どもの「遺伝子検査」は必要か?国が遺伝子検査の”規制”に消極的なある理由
子どもの権利を侵害していないか? 所管する「経産省」は規制に消極的
企業が消費者に直接販売する、子どもの教育への応用を目的とした遺伝子検査をめぐっては、これまでも専門家から懸念が示されてきた。にもかかわらず、「野放しの状態になっている」と林教授は指摘する。 「一般向けの遺伝子検査を実施する事業者でつくる団体は一応、検査対象を成人に限定しているようです。ただ、それはあくまで団体の自主基準であって、加盟していない検査会社は野放しと言っていいでしょう。 病院が行う医療目的の遺伝子検査は厚生労働省が所管していますが、一般向けの直販型遺伝子検査の場合は規制がありません。直販型はどこの管轄かというと、厚労省ではなく経済産業省なんです。 一般的に言って、経産省は経済成長のためにいろんな産業の芽を育てていくことを重視しています。だから規制をかけることには消極的な面があるんです」 武見敬三厚生労働大臣は4月16日の会見で、都内の保育園が子どもの遺伝子検査を推奨していることについて「小さな子どもにゲノム検査が行われていたことに驚いた」と述べ、民間遺伝子検査への対応を検討する考えを示している。 「国が省庁横断的に対応して子どもを守ることを重視するのであれば、子どもをマーケットにした遺伝子検査を何らかの形で禁止または抑制するルールを作ることはできると思います」 子どもの遺伝子検査を規制することについて、林教授はどう考えているのだろう。 「私自身は子どもの権利を守るという観点から、規制してもいいのではないかと考えています。 『子どもの権利条約』にはこんなことが書かれています。自分に関係のある事柄について自由に意見を表す権利を持ち、その意見は子どもの発達に応じて十分に考慮されなければならない、と。 幼稚園や保育園に通う子どもが、自分の遺伝的な素因を知りたいと思うかどうか。そもそも、知りたいか知りたくないかを判断できるだけの能力があるでしょうか。 子どもの意思がわからないうちから親の判断で遺伝子情報を知ってしまうことが、子どもの権利を侵害することに当たらないかというと、大きな問題があります。親が子どもの遺伝子検査をして結果を知ることは、子どもの『知らないでいる』『知らされないでいる』自由を奪っていると言えるからです」 ちなみに、医療社会学を専門とする東京大学医科学研究所の武藤香織教授が10年ほど前に公表した「遺伝子検査を買おうかどうか迷っている方へのチェックリスト10か条」の10番目には、こうある。 「10 子どもには、大人になって自分で選べる権利を残しましょう 未成年者の遺伝情報は、しっかり保護してあげることが成人の務めです。(略)本当にそのお子さんのためになるのかどうか、(略)よーくよーく考えてください」