植田総裁「円安の影響は無視できる」発言に呆然…”円相場急降下”を招いた決定会合で明らかになった「日銀の根本的な問題」
日銀はマーケットを理解していない
永濱:2024年3月の日銀政策決定会合でマイナス金利が解除されましたが、その前にリーク報道がありました。4月の決定会合の直前にも、時事通信が「日銀が国債購入額を減らす」と報じましたが、実際の会合では現状維持が決まっています。 エミン:外れましたよね。あれはきっと市場の反応を見るためにわざとリークしているのでしょう。円安が進んでいたので、国債購入額を減らすとどのくらい円安を抑制できるか試したのではないでしょうか。でもマーケットはほとんど反応しなかったので、減額しても意味がないと思い、撤回したのかもしれない。 要するに、植田さんは黒田さんとは真逆のやり方をしています。黒田前総裁の時代は、政策の変更は毎回「サプライズ」で、マーケットがまったく予想していないタイミングで、予想外の政策変更をしていた。でも植田総裁のやり方は、事前にリークして、地ならしをして、大丈夫そうであればやる、という感じです。 でも、日銀は根本的にマーケットを理解していないと思います。今回、国債購入額の減額をリークしましたが、相場を見ればその程度のことで急激に円高になるとは思えない。まあ、日銀の仕事は為替取引ではないので、マーケット感覚を持っている人があまりいないのでしょう。結果、植田総裁の記者会見中に、急激に円安が進むという最悪の展開を招いてしまいました。
決定会合でやるべきだったこと
4月の決定会合では、事前リークよりも、サプライズを狙うべきだったかもしれません。加えて、今後の利上げを示唆する「意味深な内容」なんかを入れておけば、マーケットはもっと悩んだはずです。 中央銀行のアナウンスとは、「日銀はこれから利上げする」などと、方向性をはっきり読み取れるものではダメなのです。日銀が何をするかがわかれば、投機筋は全力でポジションを取ってきますから。 要するに、中央銀行の総裁とは「正直に喋ってはいけない」仕事なのです。本音は「できるだけ利上げせず緩和し続けたい」だとしても、「円安による物価上昇を懸念している」など、ある程度タカ派なことも言うべき。 そうしておけば、投機筋もある程度ヘッジしなければならなくなる。「円安の影響は無視できる」などと言えば、投機筋は全力で円を売ってくるに決まっています。 永濱:5月になって岸田前首相と植田総裁が面会して以来、植田総裁の発言のトーンがややタカ派に変わりました。 エミン:おそらく「円安の影響は無視できる」発言について注意されたのでしょう。 永濱:そうでしょうね。 『もはやインフレに“歯止め”がかからない事態...誰の思惑も通じないマーケットが描く「悲惨すぎる日本経済の行方」』へ続く
永濱 利廣、エミン・ユルマズ