2018年も「円安なき株高」を予想
日経平均株価の先行き12カ月見通し(≒2018年)を2万5000円とします。従来の先行き12カ月見通しから3500円の上方修正です。2018年も世界経済が好調に推移する下、本邦企業業績は2桁近い増益が見込まれることに加え、各国中銀の緩和的な金融政策が株価上昇に貢献するでしょう。 また景気回復が長引くと、企業業績の改善モメンタムが鈍化する反面、投資家の楽観度合いが強まることからPERが切り上がる、という過去のパターンが再来する可能性もあります。従って増益率見合いもしくはそれ以上の株価上昇が期待でき、バリュエーション次第では2万6000円程度まで上値を伸ばす展開も十分に想定されます。
企業業績は一段と改善する見込み
現時点でTOPIXの予想EPS(先行き12カ月の一株あたり利益)は2018年が124、2019年が134。それを基にTOPIXの2018年末値を試算するとPER12倍なら1610pt、14倍:1880pt、16倍:2150pt、18倍:2420ptとなり、そこにNT倍率12.5を適用して日経平均に換算するとPER12倍:20125円、PER14倍:2万3500円、PER16倍:2万6875円、PER18倍:3万250円という数値が得られます。 当社日本経済予測チームは日本の実質GDP成長率を2017年度:+1.6%、2018年度:+1.3%、2019年度:+0.7%と予測。株価により関連の深い名目GDPは17年度:+1.7%、18年度:+1.9%、19年度:+1.8%です。消費増税が予定されている2019年度の実質成長率はさすがに1%程度とされる潜在成長率を下振れるものの、景気後退局面入りは避けられるとの基本シナリオです。従って、企業収益は拡大が見込まれます。 2%近い名目成長率とプラスのGDPデフレータを前提にするならば、予想EPSがさらに切り上がる展開も想定されます。日経平均の2万5000円という予想はコンセンサスの予想EPSにPER15倍程度を乗じて算出しましたが、マクロファンダメンタルズの改善次第では株価にアップサイドリスクが生じるとみています。そこで企業業績の先行指標として、景気ウォッチャーの先行きDIと製造業PMIの新規輸出受注に注目することが有効です。企業業績が上方修正されるポイントとしては、それらが50以上で推移していることが目安となります。 また企業の収益力向上が株価上昇に直結しやすくなっていることも重要です。日本企業の弱点は、売上高マージンの低さにあることが知られていますが、ここ数年は売上高経常利益率が改善する下でROEは8%を超え、それに伴ってPBRが切り上がり易くなっています。日本株は、ROE8%以下の状況でPBRが概ね1倍前後で頭打ちとなる傾向があるものの、ROEが8%を超えてくると業績改善がダイレクトに株価に反映される傾向があります。加えて、ここ数年の好業績で自己資本の積み増しに目途を付けた企業が多いなか、スチュワードシップ・コード等に基づいて株主が経営者に積極的に働きかければ、予想以上に還元姿勢が強まる可能性もあります。株主還元に拡大の余地があることをアップサイドリスクとして認識しておくと良いでしょう。 なお今回の株価見通し上方修正に際してUSD/JPYの見通しは変更していません。USD/JPYの先行き12カ月の見通し(≒2018年)はこれまでと同様に113円で据え置いています。従来、株価と為替の見通しは同時に変更することが通例でしたが、2016年頃から両者に乖離が観察されており、今後もこの乖離が拡大すると予想しています。依然として日々の値動きベースでは円安・株高となることが多いものの、やや長い目でみると円高・株高の関係にあり、少なくともこの2年程度は円安→株高という因果関係が成立していません。従って2018年も「円安なき株高」という形になっています。
(第一生命経済研究所・主任エコノミスト 藤代宏一) ※本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。