森保監督の五輪兼任監督のメリットは生かされているのか?
ヨーロッパのシーズンオフにフランス南東部で開催される、23歳以下のナショナルチームを対象とした国際大会で、日本代表もエントリーしている第47回トゥーロン国際大会の組み合わせが9日、日本サッカー協会(JFA)から発表された。 大会には12ヵ国が参加。グループAの日本は現地時間6月1日にイングランド、4日にチリ、7日にポルトガル各代表と対戦する。3つのグループの1位と、2位の3チームのうち成績上位の1チームが12日の準決勝、15日の決勝戦に臨む。 参加国は23歳以下という条件のもと、代表チームの強化事情を鑑みながらチームを編成する。日本の場合、たとえば昨年は1997年1月1日以降に生まれた、東京五輪世代となるU-21代表を編成。いまはA代表でプレーするDF冨安健洋(シントトロイデンVV)らを擁して7位に入った。 今年の日本代表スケジュールでは、東京五輪世代のU-22代表の6月は詳細未定ながら海外遠征と記されていた。来夏に迫った自国開催のヒノキ舞台へ向けて、引き続きトゥーロン国際大会で強化を図っていくことになるが、問題はチームを率いる監督となる。 本来ならばA代表、U-22代表の指揮官を兼任する森保一監督となるが、トゥーロン国際大会とA代表が臨むキリンチャレンジカップ2019の日程がほぼ重複する。おそらくは前者の指揮を、A代表の横内昭展ヘッドコーチが監督代行として執る。 東京五輪に臨む男子代表チームを率いていた森保監督が、昨夏のワールドカップ・ロシア大会を指揮した西野朗監督からバトンを引き継いだのは昨年7月末。しかし、日程が重複する関係で、五輪代表チームを指導したのは、直後にインドネシアで開催されたアジア競技大会だけとなっている。
五輪代表が臨んだ昨年11月の中東ドバイ遠征、今年3月のU-23アジア選手権予選(ミャンマー)の指揮は、J1を3度制したサンフレッチェ広島時代からヘッドコーチとして森保監督を支え、全幅の信頼を寄せてきた横内監督代行に託している。 「横内コーチとはこれまでも長く一緒に仕事をしていて、意思の疎通も取れている。常に同じ絵を描きながら進んできているし、横内コーチが指揮を執ることは私が執ることと同じであり、横内コーチが言っていることは私が言っていることと同じです」 横内コーチとの強い絆を、森保監督はこんな言葉で表現したことがある。しかし、今後のスケジュールを見ても、森保監督が五輪代表を直接指揮できる機会は、おそらく12月28日の国際親善試合(対戦相手未定、トランスコスモススタジアム長崎)まで訪れない。 予定では9月から、2022年のワールドカップ・カタール大会出場をかけたアジア予選が始まる。ますますA代表への比重が高まるなかで、メダル獲得が期待される東京五輪も待ったなしで近づいてくる。もっとも、兼任監督が困難な仕事であることは、森保監督自身が発していた言葉からもわかる。 「2つの代表の監督を務めるのは本当に困難だし、一人でやるのであれば不可能なことだと思う」 日本がプロ時代に入った1993年以降では、兼任監督は2000年シドニー五輪でベスト8、2002年ワールドカップ日韓共催大会ではベスト16へ日本を導いたフィリップ・トルシエ監督だけだった。そして、JFAの関塚隆技術委員長は当時の成功例をもとに、西野監督の後任を森保監督に一本化した。 しかし、トルシエ監督と森保監督が置かれた状況はまったく異なる。開催国としてワールドカップ予選を免除されていたトルシエ監督は、1999年および2000年前半のA代表をいい意味で無視。U-20代表の主力選手を五輪代表に引き上げながら、計画的に強化を図ることができた。