“怖いガンダム”への挑戦「機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム」が描くMS描写へのこだわり
MSのデザインについては「やはりサンライズさんにとっては大事なIP(知的財産)なので、やってはいけないことはありました。けど同時に、これ通るんだ? みたいなこともありました」という由良。「例えば、ソラリが操縦する、ザクIIのアンテナですね。隊長機なので頭にアンテナが付くものなんですが、ウルフ隊だからと、かわいい耳のようになっているんです。側から見ていて“これは彌富さんが通さないだろう”と思っていたら、いいと言っていただけたり(笑)」と明かすと、彌富も「明らかなNG事項はあるのですが、逆に言えばそれ以外の試みは、社内的にOKであればいいですよと(笑)。もちろん、最終的に全ての要素はサンライズでチェックしていますけどね」と笑みを浮かべる。
Unreal Engine 5 の貢献
由良が代表を務める制作スタジオ・SAFEHOUSEは、大ヒットゲーム「オーバーウォッチ」のシネマティック映像なども手掛けた、Blizzard Entertainment の元スタッフを中心に組織されている。一流アニメーターたちの手によって、モーションキャプチャーによるアクターの演技と、繊細なMSアクションの融合が実現した。 「人物の動きはモーションキャプチャーで収録しています。監督の意向で英語版の声優にアクターまでやってもらいました。そして、MSの動きは全てアニメーターによる手付けです。ここだけは絶対に高水準のクオリティーを出さなければいけないので、『オーバーウォッチ』でもメインをはったレイ・シュウが、メカニカル・アニメーション・スーパーバイザーとして、全MSを担当しています。また、弊社の中にも数多くのガンダムファンがいるので、特に第1話では、“ファーストガンダム”からのレファレンスを見ていただけると思います」(由良)
それだけこだわりの詰まったシリーズの制作期間は、企画の立ち上げから数えて約3年半。30分×6話という大作の制作期間としては短く感じられるが、そこで大きな役割を果たしたのがUE5だ。「もともと、UE5を導入し、リアルタイムレンダリング(※データの解析や生成)で全ての制作を行うのが今回の企画の趣旨でもありました。コンポジット(※合成)なしでここまでの大作を作る試みは、もしかしたら世界初かもしれません」という由良。彌富も「UE5を使うことで、短期間かつ少人数で高品質な映像を実現できました。これまでにない新たな表現方法を追求できたのは大きな挑戦でしたけど、完成させることができて、本当にほっとしています」と述べる。