“怖いガンダム”への挑戦「機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム」が描くMS描写へのこだわり
ザクタンク奮闘の理由
一方で「もともとガンダムシリーズは、敵味方を単純に区別しないこともひとつのテーマになっています」と語る彌富。その言葉の通り、本作では、レッド・ウルフ隊の支援に駆けつけるグフカスタムが、ヒーローのように頼もしく映るシーンもあり、戦争ものとして、MSの兵器としての一面がより浮き彫りになっている。 “白い悪魔”の恐ろしさを演出するため、さまざまな工夫がこらされた。由良は「観た方には気づいていただいたと思いますが、今回のガンダムは表情が変わるんです。戦闘が終わったら目がぱっと開いたりする。そうやって、いかにして怖さを演出するか、仕草にもすごく気を使いながら試行錯誤しました。また、全話を観た後で振り返っていただくと、その仕草への理解が深まるようにしています。ただ怖いだけではなく、ちゃんと操縦するパイロットが乗っているんだということが、見返すとわかるようになっているんです」
圧倒的な性能差を誇るガンダムに対抗する、ジオンの奮闘も本作の重要な要素。その中でも特に前半で印象的なのが、ザクタンクの活躍だ。彌富は「理由はわからないんですが、脚本のギャビン・ハイナイトがザクタンクを好きらしいんです(笑)。ただ、一年戦争のタイムラインで出せるモビルスーツには制限があるため、その必然性を大切にしながら、ギャビンとも相談して登場機体は決めていきました」という。
由良も「あえてザクタンクを活躍させたというよりは、その戦場で動く機体が、ザクタンクしかないという状況ですよね。ガンダムを止めることができず、ザクIIは撃破されてしまい、生き残るために使える手段がザクタンクしかなかった。そうした必然性があってこその活躍なので、魅力的に映ったのではないでしょうか」と語る。
そして、ガンダムと共にジオン軍を苦しめるのが、連邦の量産型MSジムの存在。過去のシリーズと一味違い、どこか無機質で冷たいジムの特徴といえるのが、やはり目だと由良は明かす。「ジムも(メカニカルスーパーバイザーの)山根公利さんがデザインしているのですが、目がアニメと違ってモノアイに見えるんです。山根さんが参考にされたと言っていたのが、無人兵器のプレデターのカメラ。無機質にキョロキョロと動く感じが、より恐怖感を演出していると思います」