掛布が語る「阪神が死のロードを克服する方法」
阪神にとって正念場となる8月がスタートしている。阪神の本拠地である甲子園球場は、この時期、高校野球に使用されるため、アウエーの試合が続き数字的にも負け越しが続いたので私たちの時代は“死のロード”と表現されていた。選手自身が大きな荷物を持って移動しなければならない時代は、まさに“死のロード”だった。夏バテでコンディションを崩す選手も少なくなく、真弓明信氏などは夏のロードになると、げっそりと頬がこけ体重が落ちてしまうことに悩んでいた。だが、私は夏が得意だった。8月8日の広島戦で前田健に投げ勝った藤浪晋太郎が「夏の甲子園の時期が大好きだ」とヒーローインタビューで吠えていたが、いわゆる夏に強い選手である。 食欲も旺盛で、私は夏になると体重が逆に増えた。とりわけ8月の時期には、甲子園特有のライトからレフトへの浜風が強く吹く。その風を避けて敵地に出ることは左打者の私にとっては本塁打量産につながった。少しアルコールを入れて食欲を増進させておき、よく食べて、よく寝ることが夏を乗り切る基本だが、練習でもノックを大目に入れて下半身を痛めるなどして練習量が落ちてしまうことに気をつけた。だが、今では、東京への新幹線移動時間も、30分短縮され、空調の効いた京セラドームを準本拠地として使用できるようになってからは、昔のような長期ロードもなくなって、もう死のロードという言葉自体が死語となっている。 セ・リーグは、8月に入って巨人が4連敗するなど、阪神、広島、中日を含めた4球団が大混戦となっている。この夏のロードを制するチームがペナントレースを制すると言っても過言ではない。その混セの中で阪神が生き残るためには「70人の野球」というものを意識する必要があると思う。打線で言えば、固定されているのは、上本、鳥谷、ゴメス、マートンの4人だけだ。上本にしても初めてフルシーズンを戦うわけで、この夏をどう乗り切るかが正念場になっている。 大和の抜けたセンター、ライト、サード、キャッチャーのポジションについては、相手チームとの相性、選手のコンディション、調子を見極めながら、ベンチが、臨機応変、適材適所的な起用をしていかねばならない。選手のコンディションを把握するためにトレーニング部門のスタッフとも密にコミュニケーションを取ることも重要だろう。相手投手の左右にとらわれず、結果を出した選手、調子がよく振れている選手を使う手があってもいいと思う。そしてベンチ入りメンバーだけにこだわらず、2軍のメンバーも含む70人全部を視野に入れて考えることが重要だろう。たとえば、2軍には、左キラーとして威力を発揮する狩野恵輔や、高山久という外野手も控えている。