パワーフェードの打ち方を解説 飛んで曲がらない最強のフェードとは?
スコッティ・シェフラー(米国)、キャメロン・チャンプ(米国)、そして日本では小祝さくらなど、国内外のツアートップ戦線で活躍する選手が得意とするドライバーショットが、パワーフェードです。プロに好まれるフェードボールですが、その一方で、飛距離が出ない、球が上がりすぎるなどの理由から敬遠しているアマチュアゴルファーも多いのではないでしょうか。本記事では、パワーフェードと通常のフェードの違いから、パワーフェードの理論、そしてパワーフェードの具体的な打ち方まで解説します。 【ドローよりフェードの方が飛ぶって本当?】小祝さくらのドライバースイングを連続写真でチェック 1. パワーフェードとは? コントロール性の高いショットとして、上級者に好まれるフェードボールですが、その種類は実にさまざまです。球を左に打ち出すプルフェード、右に打ち出すプッシュフェード、そして高い弾道のハイフェード、低い弾道のローフェードなど。 しかし、これらのフェードボールとはさらに一線を画すパワーフェードは、アッパーブローで打ち出されるスピン量が少ないフェードなので、強い弾道で伸びていき飛距離が落ちない、言葉通りパワーのある強いフェードなのです。 パワーフェードの特徴【1】:フェードボール特有のコントロール性 パワーフェードが上級者に好まれる理由は、なんといってもそのフェード特有のコントロール性の高さにあります。 通常のフェードよりスピン量は落ちますが、ドローに比べ曲がり幅が小さく、狙ったラインに正確にボールを運ぶことができます。また、パワーフェードは打ち方も比較的やさしく、ダウンスイングで体を回転し続けながらボールを打てるため、強く振ってもドローのようにフェースが返り、つかまりすぎる心配がありません。 スイングテンポが速くなりがちな風の強い日や、狭いフェアウェイを狙うプレッシャーのかかる場面でも、ターゲットにボールを運びやすい頼りになるショットといえます。 パワーフェードの特徴【2】:ドローボールにも劣らない飛距離 パワーフェードはフェードの右に曲がる特性を持ちながらも、飛距離を犠牲にすることなく、ドローボールと同様の飛距離を確保することができます。 通常のフェードはダウンブローで打つことが多く、スピン量が増加し飛ばない傾向にありますが、パワーフェードはスピン量を抑える打ち方で打つフェードなので、強い弾道で伸びていき飛距離が落ちないのが特徴です。飛距離を稼ぐために方向性を犠牲にして、ティーショットでドローボールしか打っていなかったゴルファーの新しい選択肢になるかもしれません。 実際、小祝さくら、脇元華、谷原秀人など多くのプロを指導する吉田直樹コーチは、指導するプロ達にパワーフェードを勧めているといいます。 「ドローと比べ、フェードの方が調子が崩れにくく、1年を通してスイングが安定します。質の高いフェードボールであれば飛距離はドローと変わらず、小祝選手に関してはフェードの方が飛んでいるくらいです」と語っています(関連記事「最強ツアープロコーチが教える マジック★ゴルフメソッド 吉田直樹コーチ編」参照)。 コントロールしやすく飛距離も出るとあれば、アマチュアもこのパワーフェードを試さない手はないでしょう。 パワーフェードの特徴【3】:トッププロに支持される戦略的メリットの高さ 飛距離と精度を両立したパワーフェードは、メジャー大会などのタフなコース条件でも安定したパフォーマンスを発揮できるため、現代ゴルフにおいて戦略的に有利な選択肢のひとつとして、トッププロから広く支持されています。 2024年8月時点の男子世界ランキングを見てみると、スコッティー・シェフラー、ジョン・ラーム、コリン・モリカワ、ビクトル・ホブランド、ウィンダム・クラーク、マックス・ホーマー、トミー・フリートウッドといった、上位に名を連ねる多くの選手がフェードをメインにゲームを展開しています。 今や世界の主流はフェードボールといっても過言ではありません。 2. フェードボールやスライスボールとの違い ここで気になるのが、パワーフェードが、フェードボールやスライスボールとどう異なるのかという点です。 一般的に右に曲がるボールは、大きく分けてフェードとスライスの2種類に分類されます。フェードとスライスの違いは、意図的に曲げているかどうか、そしてコントロールできる範囲の曲がりかどうかです。フェードは、意図してコントロールした右へ曲がるボールであり、スライスは意図せず大きく右へ曲がってしまうボールを指します。 初心者が打つ右に曲がるボールがスライスと呼ばれるのは、その多くが意図せずに起こっているからなのです。 フェードは通常、スピン量が多くボールが止まりやすい一方で、飛距離が出にくい傾向にありますが、パワーフェードはスピン量を抑えることで飛距離を確保しつつ、フェード特有の曲がりづらいコントロール性を維持した、飛ばしに特化したフェードボールを指します。 フェードボールの原理 パワーフェードの理論に深入りする前に、ここで一度、フェードボールの原理を確認しておきましょう。 フェードボールとは、クラブフェースの向きとスイング軌道(クラブヘッドの重心が動いていく方向)の関係によって、ボールの回転軸が右に傾くことで生じるショットです。 インパクト時スイング軌道の向きよりクラブフェースが開くと、ボールの回転軸が右に傾き、ボールは飛行中に横方向の力を受けるため右へ曲がる弾道が生まれます。また、ドローやストレートに比べバックスピンが増加するため、ボールが高く上がりグリーンで止まりやすくなりますが飛距離が制限されるのです。 そのため、スイング軌道がアウトサイド・イン軌道の場合、その軌道よりクラブフェースが開けば(右を向いていれば)打球は右に曲がります。同じように、スイング軌道がインサイド・アウト軌道やインサイド・イン軌道であってもクラブフェースがその軌道より開くと打球は右に曲がるというわけです。 さらに、フェードを深く理解するためには、ギア効果も覚えておくといいでしょう。ドライバーのフェース面は湾曲しているため、打点がフェースの中心からずれると、ボールのスピン特性が変化する「ギア効果」が発生します。 例えば、フェードボールになる条件でクラブを運び、さらにフェースのヒール(根本)側で打つとボールの回転軸はより右に傾くためフェードが強まり、トゥ(先端)側でボールを打つと右へ傾いた回転軸が緩和されフェードが弱まるといった効果があります。 思うように曲がり幅をコントロールできないときは、打点を確認するとその原因がわかるかもしれません。 アマチュアのフェードが飛ばない理由 多くのアマチュアは、極端なアウトサイド・イン軌道や、鋭角なダウンブローでクラブヘッドを振り下ろしフェードを打とうとするため、飛距離が出ない問題に悩まされています。 これは、クラブヘッドを過剰に上から叩きつけたり、ダウンスイング時に体が大きく左に移動してしまうことが原因です。こうした打ち方では、打点がバラつきスピン量が過剰に増えるため、結果として飛距離の出ない「こすり球」のような弱いフェードになります。 アマチュアの多くが右に曲がるスライスに悩んでいるため、ドローよりもフェードの方が自然な動きで打ちやすいと感じることが多いですが、正しいスイング軌道やクラブヘッドの使い方ができていないため、右に曲げることができても飛距離が出ないのです。 3.パワーフェードの打ち方 ドライバーのフェードボールは通常、オープンスタンスに構え、わずかなダウンブローのアウトサイド・イン軌道で打ちます。この打ち方は、簡単にボールを右へ曲げることができますが、打ち出し角度が低くなったり、スピンが多くかかりキャリーが伸びず飛びません。 2打目の距離が長くなるのは避けたいので、ティーショットでフェードを使いづらいと悩むゴルファーが多いのではないでしょうか? これらの悩みが解決できるパワーフェードの打ち方とは、いったいどんな打ち方なのでしょう。 パワーフェードの理論 繰り返し述べている通り、パワーフェードは、通常のフェードとは異なり、飛距離とコントロール性を両立させるショットです。これを実現するためには、次の3つの条件が必要です。 【1】アッパーブローでボールをとらえる 【2】クラブフェースをクラブパスより少し開いて当てる 【3】ロフトを立てる ひとつひとつの条件を見ていきましょう。 【1】アッパーブローでボールをとらえる フェードといえば、ダウンブローで打つものだと考えることが一般的かもしれませんが、ドライバーのパワーフェードでは、アッパーブローでボールを高く打ち出し飛距離を稼ぎます。 アッパーブローで打つほど、アウトサイド・イン軌道が大きくなるので、実はアッパーブローでボールをとらえるほうがフェードがかかりやすいのです。 【2】クラブフェースをクラブパスより少し開いて当てる フェード回転をかけるため、スイング軌道に対してフェースの向きをわずかに開く必要があります。このフェースの開きとスイング軌道の差が大きいほどボールの曲がり幅も大きくなります。 ドライバーショットでは、スイング軌道とフェースの向きの比率が2:1になれば、ちょうどいい曲がり幅でターゲットへボールが戻ってくる理想的なショットが打てるとされています。 弾道測定器を使用して練習できる場合は、この2:1の比率を目指してカーブのコントロールを練習すると効果的です。例えば、スイング軌道をアウトサイド・インに4度、フェースの向きを軌道より2度開くと、左から出てフェードでターゲットに戻るショットを打つことができます。 【3】ロフトを立てる ドライバーでは、ロフトを立ててインパクトするとスピンロフト(入射角とインパクトのロフトの間の角度)が減ります。このスピンロフトが大きくなるほど打球のスピン量も増えるので、インパクトのロフトを減らせると打球のスピン量を抑えることができます。 本来、フェードはドローに比べスピン量が多いショットなので、意図的にスピンを減らす打ち方で飛距離を伸ばしましょう。 パワーフェードの打ち方 前項で見てきたように、「アッパーブロー」「フェースの開き」「インパクトのロフト角の調整」という3つの要素を組み合わせれば、飛んで大きく曲がらない力強いパワーフェードを打つことができるのです。 明確な目標が立ったところで、続いてどのようにこのインパクトを実現できるか、パワーフェードの打ち方の詳細を説明します。 前準備 ボールを曲げたいときの基本は、「準備は念入りに、やることはシンプルに」です。理想のインパクトを実現しやすいアドレスを作ることで、スイング中の仕事は格段に少なく済みます。 まずドライバーのロフトを調節できる場合は、ロフトを立てておきましょう。あらかじめロフトを立ててしまえば、スイング中に手で難しい操作をせずとも、通常よりロフトが立つためスピン量を減らすことができます。 アドレス スクエア~オープンスタンスに構え、ボールを通常より半個左に置くことで、アウトサイド・インのスイング軌道を確保します。 次に、腰から上の上半身を右に傾ける構えで、アッパーブローでインパクトしやすくします。 バックスイング スタンスラインに沿ってバックスイングを上げます。 ダウンスイングでクラブの重心のコントロールが難しくなるため、クラブを極端なインサイドやアウトサイドに上げないようにしましょう。 ダウンスイング 左に体重を乗せながら、体の回転を止めずに振り抜きます。 ハーフウェイダウンでクラブヘッドが手の後ろ、またはヘッド半個分アウトサイドを通過していれば、アウトサイド・イン軌道でインパクトできる確率がかなり高まります。 インパクト 適度な右側屈でアッパーブローにボールをとらえます。正面から見たとき、アイアンのインパクトのように上半身が垂直になってしまうと、入射角が鋭角になり、スピン量が増えてペラペラのフェードになる可能性が高いです。 左足に踏み込んで打ちますが、頭が左足の上にくるほど横移動しないよう、ビハインド・ザ・ボールでしっかり踏ん張って打ちましょう。 そして、インパクトのロフトを立てるためにわずかなハンドファーストを作りたいので、左手の甲がターゲットを向くようにします。この甲が空を向いた形のハンドファーストを作ると、パワーフェードは打てないので気をつけたいポイントです。 フォロースルー わずかなハンドファーストのインパクトから左のポケット方向へ手を抜いていきます。 通常のフェードでは左手首の背屈を使うアンダーリリース(右手の被せが遅いリリース)を使うことが多いですが、パワーフェードではスピンがかかり過ぎ、球が吹け上がるおそれがあるので注意が必要です。 コースで気をつけたい2つの実践ポイント さっそくコースでパワーフェードを試してみたいゴルファーのために、コースでの実践ポイントを2つ紹介します。 ティーイングエリアでのライン取り フェードのライン取りは、ティーイングエリアの右サイドにティアップし、対角線上にボールを打っていくのが基本です。 しかしフェードとはいえ、極端に左へ向いて構えるのは避けたいところです。心理的影響からスイング中に体が反応し、無意識にクラブフェースを大きく開いて、フェードではなくスライスしてしまった……なんてこともよくあります。 自信を持ってスイングにコミットできる範囲でライン取りをおこないましょう。 フェース向きの管理 パワーフェードでは、インパクトでフェースの向きを開くことが最も重要です。フェードで一番避けたいミスはなんといっても逆球ではないでしょうか。インパクトでフェースの向きが閉じてしまうと最悪の場合、左へ引っかけてしまいます。 コースでの実践に不安が残る人は、応急処置としてあらかじめ左手のグリップを少しウィークに握ることで、フェースの向きを調節するといいかもしれません。 4.まとめ 令和のフェードは、飛んでコントロールできるパワーフェードです。アッパーブローでロフトを立て、フェースをスイング軌道より少し開いてボールをとらえることができれば、アマチュアでも力強いパワーフェードを打つことができるでしょう。 フェードを打ちたいけど距離もしっかり欲しい場面では、このパワーフェードが大活躍します。本記事を参考に練習場でマスターして、ぜひコースで無双してください。