車内に「邪魔なスペース」がある東京モノレール それが速さの秘密だった
モノレールには、レールにぶら下がる「懸垂式」と、レールの上にまたがる「跨座式」という、大きく2つの方式があります。日本で広く普及しているのは後者の跨座式で、現役路線では、千葉都市モノレール、湘南モノレールを除く国内モノレール全社がこれを採用しています。 【画像】東京モノレール車内の「邪魔なスペース」とは? そんな跨座式ですが、実は東京モノレールとその他の路線では、微妙に仕組みが異なります。 東京モノレールが採用しているのは、アルウェーグ式というもの。日本では、日立製作所がこれを手掛けたため、日立アルウェーグ式とも呼ばれています。アルウェーグ式以前の跨座式では、一般の鉄道と同様に鉄レールや鉄車輪を走行用に使用していましたが、アルウェーグ式ではゴムタイヤを走行輪に採用したことで、騒音低減などのメリットが生まれました。 一方、アルウェーグ式では、客室内にタイヤを収めるタイヤハウスが鎮座する構造となっています。たとえば、この方式を採用していた名鉄の犬山モノレール(2008年廃止)では、この部分はデッドスペースとなっていました。東京モノレールでは、タイヤハウス上に椅子を設置しているほか、空港連絡輸送用として大型荷物のスペースとしても活用していますが、それでも他の部分とは座席配置が異なっているため、客室設計上好ましいものではありません。 このアルウェーグ式を日本で改良したのが「日本跨座式」。東京モノレールなどよりも車両の床面を高くすることで、タイヤハウスの出っ張りを不要とし、客室内をフラットにしました。日本では、1985年開業の北九州モノレール以降の全ての跨座式モノレールが、この方式を採用しています。 ただし、日本跨座式では、車両の床面を高くしたことで、車両の高さ自体が大きくなってしまい、重心が上がってしまいました。そのため、カーブでは速いスピードを出せないというデメリットが生まれてしまいました。一方の東京モノレールでは、ミニバンに対するスポーツカーのように、車両の重心が他よりも低いため、速いスピードでカーブを曲がることが可能です。そのため、東京モノレールでは、国内のモノレールでは最速となる時速80キロ運転を開業時から実施しています。車内空間の設計にはデメリットがある一方、羽田空港への所要時間を短くできているのは、アルウェーグ式の恩恵なのです。
西中悠基