【欧州で先行試乗】たゆまぬ進化がもたらす未来への予感 マクラーレン アルトゥーラ・スパイダー
より一層洗練されたフットワーク
そんな変化以上に驚かされたのがそのフットワークだ。 試乗路はWRCのモンテカルロラリーの開催地に近く、道幅の狭いバンピー路が延々と続く過酷な環境だったが、アルトゥーラ・スパイダーのサスの追従性は見事なもの。有り余るパワーを躊躇なく使ってタイトなワインディングを駆け抜けるサマには惚れ惚れさせられた。 こちらもプログラムの改善により、プロアクティブダンピングコントロールの応答速度が90%も高められたというが、その効果を確実に感じ取ることができた。 それでいて、日常域での乗り味も洗練されている。件(くだん)のバンピーなワインディングでは敢えて使っていたコンフォートモードでのダンピングは、120km/h級の高速域になるとむしろしなやかに過ぎるほどで、敢えて一段硬めのスポーツモードで上屋の動きを落ち着けたくなる。 そういう走行モードの設定が、目線をずらさずにステアリングから指先を伸ばしてサクサクと行えるようになった、それもまたマクラーレンのインターフェイスへのこだわりを感じるところだ。 油圧を用いる750Sのプロアクティブシャシーコントロールにも匹敵するだろう、フットワークの艶かしさを備えたことで、アルトゥーラ・スパイダーはスポーツカーとしての所作もひときわ「らしい」ものとなった。 屋根開きの爽快感と共にいただけるのは、紛れもなくマクラーレンだからこそもたらされる走りの味わいである。
試乗車のスペック
全長:4539mm 全幅:1913mm 全高:1193mm 最高速度:330km/h 0-100km/h加速:3.0秒 車両重量:1560kg パワートレイン:V型6気筒2993cc ツイン・ターボチャージャー+電気モーター 最高出力:700ps(システム総合) 最大トルク:73.2kg-m(システム総合) ギアボックス:8速デュアルクラッチ・オートマティック(後輪駆動)
渡辺敏史(執筆) 香野早汰(編集)