西武が「赤坂プリンス跡地」を切り離す戦略的狙いとは 帳簿価格で1500億円の「東京ガーデンテラス紀尾井町」
結果、競合他社よりも総資産に占める有形固定資産の割合が高い。2024年3月期末で西武HDの有形固定資産は約1兆3800億円。これは総資産の84%を占める。 関東私鉄最大手の東急の場合、保有する有形固定資産は約1兆8200億円と西武を上回るが総資産に占める比率は68%だ。小田急電鉄をみても有形固定資産は1兆0100億円で総資産比は77%。西武の資産保有比率の高さが目立つ。 見過ごしてはいけないのは、資産効率の低さから「稼ぐ力」が見劣りすることだ。下記の表を見てほしい。西武の総資産に占める利益の割合は、群を抜いて低い。セグメント別の営業利益を見ても、賃貸収入を主とする不動産事業も小粒感が否めない。
資産のスリム化による経営体質の改善、そして回転型ビジネスを構築し収益を底上げする対策が急務というわけだ。 西武が不動産流動化を急ぐもう1つの背景には、株主からの圧力もある。 5月14日の大量保有報告書で、3Dインベストメント・パートナーズが西武HD株式の5%超を保有したことがわかった。 3Dはシンガポールを拠点とするアクティビスト(物言う株主)だ。保有目的を「純投資及び状況に応じて、経営陣への助言、重要提案行為を行うこと」としている。少なくとも、今年3月上旬ごろから、少しずつ西武株式を買い集めていたようだ。
3Dと西武が直接対話しているかどうかは不明だ。「株主・投資家について、個別のやりとりを公表することは控える」と、広報担当者は口を閉ざす。 ただ、西武がどのような要求を受けるのかを推察するうえで参考になる前例がある。3Dが15%超を出資するサッポロホールディングスでのケースだ。 ■3Dの動きと関係なく「売り物」を計画 サッポロは「恵比寿ガーデンプレイス」などの不動産資産を持つ。それらから安定的な利益を出す不動産事業が、利益率の低い酒類事業を補う形だ。そのような不動産頼みの経営から「サッポロビル」とも揶揄される。