マイナ保険証の「メリット」は“真っ赤なウソ”だった?…“政府資料”が物語る医療現場での「役立たずな実態」とは
政府がCMで「真っ赤なウソ」を喧伝
それはともかく、2024年2月16 日からテレビCMも大々的に始まりました。YouTubeや新宿の屋外の大型ディスプレイでも流れていました。ところが、そのCMの内容が誇大広告を通り越して、真っ赤なウソなのです。 民間のサービスなら、消費生活センターに苦情を持ち込めるレベルにひどいのです。 CMはいくつかのタイプがあるのですが、その一つが、「患者本人がこれまで別の病院で受けた診療内容を忘れてしまっても、マイナ保険証に紐づいた過去の診療内容を病院側で共有して確認できるので安心だ」とアピールするものです。 見逃していけないのは「過去」の診療内容を共有できるとしている点です。なぜわざわざ「過去」のとしているかというと、「最新」の診療内容は共有できないからです。 共有できるのが役に立たない過去の情報にもかかわらず、CMの最後にアニメの患者に「安心」だと言わせているのは、景表法が禁じている「優良誤認」(景表法5条1号)と言ってもかまいません。 ここで基本的な話をしておくと、最新の診療内容が共有できない原因は、次に申し上げるように根本の仕組み自体にあるので、ちょっとやそっとのことで解決できません。
マイナ保険証で「最新の診療内容」の共有は“不可能”
マイナ保険証で喧伝される「医療情報」とは、保険医療行為が行われたあと、その医療機関が指定の基金などに診療報酬の残り(3割は患者負担だから提供サービス価格の残りの7割)を請求した際に登録されるデータが元になっています。 この診療報酬請求のプロセスを少し詳細に見ておくと、医療機関が診療報酬点数を計算したものを診療報酬明細書(レセプト)にして社会保険診療報酬支払基金などに送り、間違いがないかどうか審査を受けます。 この際、不備がある際には差し戻しになったりしますが、審査が通ったレセプトは支払基金から管轄の保険組合(会社の健保や自治体の健保)に回り、それに基づいて保険組合が医療機関に診療報酬を支払います。 全国のすべての医療機関を横断して共有できる患者の医療情報は、このレセプトに書かれた診療内容を蓄積したデータベースが元になっています。このデータベースがマイナ保険証に紐づけられています。 レセプトの処理は1か月分をまとめて支払基金に送られ、さらに審査に時間がかかるので、診療が行われてからその医療情報が共有されるまでに、1か月半程度はかかるといわれています(この期間には幅がありますので、少し短い場合もあればもっとかかる場合もあります)。 したがって、マイナ保険証に紐づいているデータベースを見ても、少なくとも直近1か月半ほどはどのような診療を受けたか、どのような薬が処方されたのかは確認できません。 医療従事者が1か月半前のデータを見て、人命に関わる判断ができると思うでしょうか。そういう意味でよりよい医療が受けられるようになるというのはウソです。 ちなみに、このデータベースには健康保険証に記載されている被保険者番号からもアクセスできるので、仮にそのデータに便益があっても、その点でもマイナ保険証特有のものではありません。