中国政府の株価対策は対症療法でしかない
中国政府が株価対策に乗り出す
中国株は過去3年の間、ほぼ一貫して下落を続けている。2022年には、米連邦準備制度理事会(FRB)など主要中銀の大幅利上げによって、世界の株式市場は打撃を受けたため、中国株の弱さは目立たなかった。しかし、昨年からは利上げ打ち止め観測が世界の株式市場の追い風となる中、中国株のパフォーマンスの悪さは際立った。さらに2024年の年初には、世界の中で日本株が突出して強く、中国株が突出して弱い状況が生まれた。 今年に入ってから中国政府は、株価対策に一気に乗り出した。証券行政トップの中国証券監督管理委員会(証監会)は1月29日に、株価の下落を加速させると考える「空売り」の制限を狙って、譲渡制限付き株式の貸し出しを全面的に禁止した。 2月5日には、「悪意のある空売り」の摘発を強化する方針を表明した。ある違法集団が、100以上の証券口座を利用し、空売りで1億3000万元の違法な利益を上げた事例などを公表した。 同日に同委員会は、追い証(追加担保の差し入れ義務)に対応できない投資家が、強制決済されるリスクを軽減するために、証券会社に対して、追加担保の差し入れ期限の延長や委託保証金維持率などの柔軟対応を求めた。信用買いの投資家が株価下落によって証券会社から求められた追い証に対応できず、強制的に保有株を売却される動きが株安に拍車をかけていると考えられているためだ。 6日に証監会は6日、空売りに必要な株式を貸し出す証券会社の株券転貸業務について、新規の積み増しを禁止するなどの新たな空売り規制を発表した。 また同日には、中国政府系投資会社の中央匯金(かいきん)投資が上場投資信託(ETF)への投資拡大を発表し、証監会が機関投資家に株式投資の拡大を求めた。それ以外にも、中国政府系ファンド(SWF)がETFを買い増したと公表した。こうした株価対策に利用される政府系の投資家は、「国家隊」と呼ばれる。 さらに7日には、政府(国務院)は、証監会主席の易会満氏を免職し、新たに上海市共産党委員会幹部の呉清氏を任命した。易氏は、株価対策が十分な成果を上げないことで、責任を取らされた形だ。