中国政府の株価対策は対症療法でしかない
供給過剰によるデフレの問題も
また、中国の1月の消費者物価指数は前年比0.8%下落し、4か月連続の下落となるとともに、2009年9月以来の大幅下落となった。こうしたデフレ傾向も、企業収益の縮小などを通じて株価を押し下げている。デフレ傾向の背景には、鉄鋼、EVなどで顕著な供給過剰の問題がある。ところが政府は、供給過剰を解消するために、個人の需要を喚起するような財政政策を拒んできた。逆に米国への対抗から、国の補助金を通じて半導体の国内生産を拡大させる、供給を拡大させ逆方向の政策に注力している。 中国の株価下落の背景にあるのは、こうした不動産市場の悪化、供給過剰問題である。こうした問題に本格的に手を付けずに、株価を支える政策を実施してみても、それは対症療法であり、弥縫策でしかないだろう。 (参考資料) "A Stock Bailout Won't Solve China’s Troubles(中国の株価対策、問題の根本解決にならず)", Wall Street Journal, February 8, 2024 「中国株、「介入」で下げ止まり 買い支えで個人資金誘う」、2024年2月11日、日本経済新聞電子版 「米中高官が会談 中国経済 冷え込み深刻 株価低迷で対策躍起」、2024年2月8日、産経新聞 「中国、株価対策に躍起 ETF購入や空売り摘発 7日ぶり反発も構造問題山積み」、2024年2月7日、日本経済新聞 木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) --- この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/knowledge/blog)に掲載されたものです。
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