「老害」よりもタチが悪い40代からの「ソフト老害」。放送作家・鈴木おさむが仕事を辞める理由にも「よかれと思ってやったことが、若い世代の妨害行為に…」
仕事の辞め方 #1
3月末で放送作家業・脚本業から退くことを発表した鈴木おさむ氏。「辞めよう」と決意した理由の一つに、「自分の行動がソフト老害になっているのではないか」と思ったことがあるという。鈴木氏が考える「ソフト老害」とは何なのか。 【関連書籍】仕事の辞め方
『仕事の辞め方』(幻冬舎)より、一部抜粋・再構成してお届けする。
40代からのソフト老害
40代の人は「老害」と聞くとどんなイメージを持ちますか? 老害をネットで調べると、「自分が老いたのに気づかず(気をとめず)、まわりの若手の活躍を妨げて生ずる害悪」と出てくる。 ある政治家が思い浮かんだりしませんか? 60代、70代でその会社のことを決定出来る力を持っている人が、時代の変化を感じられずに、自分の意見を正義にしてジャッジ&ゴリ押しし、若者たちが迷惑を被るパターンが多い。 僕自身も振り返ると、若い頃は老害による被害をいくつも受けてきました。若者たちが必死に作った企画書は秒でスルーされて、代わりに、「上の人」が飲み屋で思いついた一言を、「周りの大人」たちが持ち上げて、その成立してない企画を制作する「現場」に下ろしてくる。 「現場」の人たちは「こんな企画、成立してないじゃないですか」と言うが、大人たちは「上の人」の思いつきだから絶対成立させろと言う。 いざなんとか形にしてみても、結果ふるわず。すると「上の人」は「俺が思っていたのはこんなんじゃなかった」と言う。すると「大人たち」は、「お前たちがちゃんと作らないから」と言って、「上の人」がその場しのぎで言ったキーワードをまた押しつける。 そもそも「大人たち」は、「現場」出身なのだから、成立してないのなんてわかっているのだが、そんなことはどうでもいい。「上の人」に気に入られればそれでいいのだ。 結果、「現場」の人たちが四苦八苦するが、どうにもならず、ソレがさらりと終わっていく。 老害による、テレビ局あるあるの被害。どこの会社にもあるでしょう。 この場合、老害の加害者は二人いると思います。まず「上の人」です。「上の人」の一言で、下の人たちがどれだけ動かなきゃいけないかもっと想像してほしいのですが、自分の思いつきが形になるのが嬉しくて、言ってしまうという老害。 自分の感覚が、時代とかけ離れていることに気づかないという老害。 そしてもう一人は「大人たち」です。「上の人」が思いついたことが、絶対成立してないとわかっていながら、その人に認められたいがために、それをゴリ押ししてくる。僕はこっちの立場の老害がやっかいだと思うし、罪が重いと感じています。 また、厄介なのが、こういう老害による被害の話を聞いた他局の人が「あの局のあの番組、上の人の思いつきで大変らしいね」とか言うのだが、僕からしたら、その局でだって同じようなことが繰り返し行われている。 隣の老害はよく見えるんですよね。 こんな老害の被害を、若い頃は、まあよく受けました。ただ、たまに、そういう企画の中で当たりが出てしまう時があるから、迷惑な話です。こういうもので当たるのって奇跡に近いと思うのですが。