“アーティスト×お笑い芸人”対バンは新しいライブ形式として定着? 相乗効果で生まれる特別な熱量
今年に入って、音楽アーティストとお笑い芸人の“対バン”が増えている。お笑い芸人が単独ライブの出囃子でバンドの楽曲を使用していたり、バラエティ番組で自身のルーツとなるアーティストを紹介して共演するような光景は度々見かけるが、ライブハウスの現場でも共演の機会が増えているようだ。 【画像】カッコ良すぎるサーヤ(ラランド)のアーティスト姿 2023年2月にGORILLA HALL OSAKAこけら落とし公演の一環として企画された『ROCK or LIVE! -ロックお笑い部-』では、これまでゲスの極み乙女×さらば青春の光、04 Limited Sazabys×四千頭身、Base Ball Bear×ダウ90000と、それぞれロックバンド×お笑い芸人の対バンを実現させ、2024年2月には初の東京公演として、ASIAN KUNG-FU GENERATION&フジファブリック×かが屋&ミキの4組が共演した。アーティスト主催の公演もまたしかりで、MOROHAは『MOROHA VS 芸人ツアー 無敵のダブルスツアー 2024』と題したお笑い芸人との2マンツアーを開催し、全7公演にそれぞれ令和ロマン、真空ジェシカ、ななまがり、トム・ブラウン、モグライダー、ウエストランド、かが屋の7組を迎えた。シンガーソングライター・澤部渡のソロプロジェクトであるスカートは同じくソロで活動するお笑い芸人・街裏ぴんくと東名阪のCLUB QUATTROをまわるツアー『VALETUDO QUATRO 2024』を開催。ロックバンド・リフの惑星の自主企画にはPERFORMER枠としてサツマカワRPGやムラムラタムラが登場し、この9月にはZepp Haneda(TOKYO)で開催される私立恵比寿中学の『私立恵比寿中学 TAIBAN LIVE「放課後ロッケンロール -HYPER- 2024」』では、さらば青春の光との対バンを予定している。 アーティストとお笑い芸人の親和性は、どういったところに見出せるのだろうか。実際の公演の模様を交えて紐解いてみたい。 これまで3度にわたって開催された、ロックバンド・THE BAWDIESとお笑いコンビ・ジャルジャルの対バンを例に挙げてみよう。初回の開催となった2017年は『THE BAWDIES×ジャルジャルの猪突猛進チュ~!!』と題して新代田FEVERにて、『THE BAWDIES × ジャルジャル LAUGH ’n’ ROLL PARTY ~お唄とお笑い混ぜる奴~』と題した2度目の対バンは、コロナ禍の2020年に舞台を関西に移して神戸国際会館こくさいホールにて開催。そして3度目は『THE BAWDIES × ジャルジャル「LAUGH ’n’ ROLL TOUR ~ロックンロールとコント混ぜる奴~」』と題して東名阪のCLUB QUATTROをまわるツアーとして2023年に開催された。 『お唄とお笑い混ぜる奴』編では、後藤淳平(ジャルジャル)演じるシンガーソングライター・矢田心と福徳秀介(ジャルジャル)演じる音楽プロデューサー・鹿沼によるデビュー曲「僕の心の中」を通したかけ合いが人気を得ているコント「野次ワクチン」を、THE BAWDIESの生演奏をバックに据えたステージでパフォーマンス。福徳のツッコミを浴びてたじたじのTHE BAWDIESメンバーの表情に都度笑いが起こるなど、それぞれのキャラクターを活かしたコント台本と生バンドならではのグルーヴィーな演奏がマッチした見事なコラボレーションに拍手喝采が沸き起こった。また『ロックンロールとコント混ぜる奴』編では、THE BAWDIESのライブ中にジャルジャルのふたりがコント「うろ覚えで路上ライブする奴」に登場するフォークデュオなど様々な役柄に扮して飛び入り参加し、音楽とお笑いの相乗効果でさらなる高揚感を得られる展開に、フロアも大歓声で応えた。 前者はジャルジャルのコントステージにTHE BAWDIESが参加し、後者はTHE BAWDIESのライブステージにジャルジャルが参加した形だ。回を重ねるごとにキャパシティを拡大していることからも手ごたえを窺える両者の対バンは、アーティスト×お笑い芸人による新たなライブステージのあり方を双方向に提示してきた成功例と言える。