大揺れの自民党。派閥の解散は「勝負師・岸田」爆誕の号砲なのか!?
「派閥を解散するだけでは意味がない、政治資金の問題をきちんと解明しろ」そんな批判をよそに、大揺れの自民党内では新たな権力闘争が進行中だ。そのスイッチを入れたのは、これまで散々「優柔不断だ」「何も決断できない」などと言われ続けてきた岸田文雄首相。まさかの「勝負師」爆誕か!? 【写真】最近明らかに不機嫌な麻生副総裁ほか * * * ■一手で潰された麻生・茂木シナリオ 「参加議員の多くが深刻な顔をしている自民党政治刷新本部の席上でも、岸田さんだけは飄々(ひょうひょう)としている。官邸でのぶら下がり会見でもニコニコ顔が増えた。とにかく吹っ切れたというか、晴れやかな表情が目につきますね」 そう言うのは政治評論家の有馬晴海(ありま・はるみ)氏だ。 昨年末以来、安倍派を中心とする派閥の裏金問題で現職議員が立件され、内閣や党の要職者の辞任も相次ぐなど、自民党には大逆風が吹いている。にもかかわらず岸田文雄首相が上機嫌なのは、党内で進んでいた「早期退陣シナリオ」を、自身の一手で叩き潰すことに成功したからだ。 全国紙の自民党番記者が解説する。 「退陣シナリオを描いていたのは、これまで岸田政権を支えてきた麻生太郎副総裁です。支持率低迷に業を煮やした麻生氏は、今春に予定されている国賓待遇での訪米を花道に、岸田さんに代えて茂木敏充幹事長を次の首相に据えることを狙っていました。 麻生氏は『日米結束の再確認』という名目で1月9日に訪米しましたが、これも永田町では、首相の訪米を当初予定の4月上旬から3月へと早める調整のためだろうとみられていました。 それまでに岸田氏に退陣を受け入れさせれば、2024年度予算成立直後の3月末から4月頭に前倒しの自民党総裁選(本来は9月予定)を行ない、内閣総辞職と新政権発足を経て、〝ご祝儀〟で支持率が上向いているであろう4月中に衆院解散・総選挙を仕掛けることができるからです」 しかし、岸田首相は座して死=退陣を待つことはしなかった。もはや打つ手なしかという状況から放った電撃的な反撃の一手が、1月18日の岸田派解散宣言だ。 「これは完全に岸田さんの独断です。岸田派と共に主流3派として政権を支えた麻生派、茂木派は、自派閥から裏金問題が出ていないことを理由に存続を基本線としていたにもかかわらず、事前になんの相談もなし。寝耳に水だった麻生さんは激怒したと聞きます。 決断力に乏しいと言われ続け、特に自身を担ぎ上げたキングメーカーの麻生さんには頭が上がらなかった岸田さんが、ここまで思い切るとは驚きました」(前出・有馬氏) 他派閥に先んじて「解散」を打ち出した効果は絶大だった。翌19日に安倍派、二階派、25日に森山派、谷垣グループが続々と解散を表明。 ついには麻生派とタッグを組んで派閥存続に動いていた茂木派まで「いわゆる派閥としては解消し、お金と人事から決別する」(会長の茂木幹事長)と発表し、大きな流れにのみ込まれつつある。気がつけば、自民党の〝派閥村〟には麻生派がポツンと残るのみだ。 カネとポストを差配する力を持つ派閥が離合集散し、数の論理で次のボスを決めてきたのが自民党の歴史だ。ところが、茂木派も解散となれば、衆参全議員の約85%が無派閥に。こうなると、麻生氏でも「岸田降ろし」を仕掛けるのは難しい。 「根強い派閥批判に直面し、多くの自民党議員は、派閥にこだわると次の選挙で落選しかねないとおびえている。そんなムードを読み切って勝負に出た岸田さんの解散宣言によって、派閥領袖クラスの政治家たちの力は弱まり、人事権を握る総理・総裁のパワーは相対的にアップする。当面の求心力、主導権の維持には成功した印象です」(有馬氏)