富岡西・小川監督の横顔/下 自主性を尊重、選手成長 /徳島
<第91回選抜高校野球> 母校をいったん離れた小川浩監督(58)が2010年に再び監督として戻り、チームは着実に力をつけている。16年以降は県大会で準優勝1回、ベスト4入り5回と成長著しい。躍進の背景には選手の主体性を重んじる野球へ進化させたことが関係している。 6年前の高川学園(山口)との一戦が転機となった。実力は互角と思っていた相手に走攻守で圧倒され「とにかくかき回されて、気がついたら完敗していた」。強さの秘訣(ひけつ)は何か。同校の練習を見て、ノーサイン野球の存在を知った。監督からサインを出すのではなく、選手が自ら考えてプレーする姿に衝撃を受けた。 有力選手が集まり、練習時間や施設に恵まれる強豪校と同じやり方では勝てない。文武両道が校風の富岡西の選手ならば、考える力が求められるノーサイン野球は適しているのではないか。「主体的に選手が考えて動くチームでないと上は目指せない」。監督が主導権を握る指導法から、選手たちに盗塁やスクイズの判断を委ねる方針に変えた。覚悟のいる決断だった。以前知人から言われた「野球部の選手は指示待ちが多い」という言葉も背中を押した。 最初は選手同士で意思疎通ができず、ミスが重なりけんかする事も多かった。だが次第に選手は相手の隙(すき)をどう突くか考え、監督の予測を上回るプレーが出てくるようになった。「年々選手の飲み込みが早くなって、プレーの精度も上がっている」と手応えを感じている。 主体性は普段の練習でも養われている。選手自身がチームの弱点を洗い出してメニューを組み、練習中の一つのミスについてもみんなで掘り下げ、軌道修正を繰り返す。監督も選手に問題点を考えさせるよう声をかける。自主性を尊重した指導への転換が、富岡西を甲子園まで導いた。【岩本桜】