「お茶目すぎる」思わず脱力… ドラゴンボールにあった掟破りの「メタ発言」
■ジャンプへの配慮?
続いて紹介するのはピラフ一味のやり取りである。悟空たちはピラフたちにドラゴンボールを奪われ、そのアジトに侵入するもあっさりと閉じ込められてしまった。 そんな中、ピラフと会話をしていたマイがさりげなく木の棒についたウンチを持っているのを見て、ピラフは注意する。マイの言動を「品のないギャグ」と否定したうえで、今のジャンプは発行部数を伸ばしているからくれぐれもなさけない行動はするな、と……。 マイの取った行動は明らかに『ドラゴンボール』の前作である『Dr.スランプ』のアラレちゃんだ。それを自虐チックにセルフパロディしてしまうのだからスゴい。 そんなアラレちゃんはレッドリボン軍編に登場して大活躍。この2作のコラボはファンとしては嬉しい描写だった。
■最終回ではないことを主張
悟空がピッコロと天下一武道会で戦った後、亀仙人が登場して「最終回じゃないぞよ もうちっとだけ続くんじゃ」と宣言しているコマがある。 この発言にはかなり騙された読者も多かったと思う。ピッコロとの戦いを終え、亀仙人が神様にこれまでのことを話していたので、もう少しで終わってしまいそうな雰囲気がなんとなく流れていたからだ。しかし、実際にはサイヤ人編が始まり、ますます物語は盛り上がりをみせた。 ただこれは読者にとっては嬉しい誤算で、おまけにサイヤ人編以降の面白さはこれまで以上のものだった。特にフリーザとの戦いで悟空が超サイヤ人になった場面は、誰もが胸を熱くさせられた最高潮の場面といえるだろう。 ちなみに、こうしたメタ発言は1回だけではなくもう一度使用されていた。魔人ブウ編最初の扉絵に亀仙人が登場し、主人公の悟空は死んだけど悟飯が代わりになって活躍すると話しているのだ。思わず「えっまた?」とツッコみはしたが、クスリとさせられたコマだった。
■作者が楽している?
最後は、悟天とトランクスのフュージョンのシーンでのメタ発言だ。これは、悟天たちがフュージョンを完成させるために何度も練習を重ねて、ようやく成功するという場面である。 フュージョンはお互い左右対称に寸分違わない動きをしなくてはならないので、難易度がかなり高い。そんなわけで悟天たちは失敗を重ねるたび同じ動きを繰り返し、毎回同じコマが続いてしまう……。 これには、クリリンが「さっきから作者は ずいぶんラクをしていないか…?こりゃどう考えてもほとんどコピーだぜ…」と思わずツッコんでいた。そして、それに対して作者の鳥山さんが突如登場し、「このページの原稿料 タダでいいです ホントに……」と編集長に向けて訴えかけている。 いろいろととんでもない発言だが、こういう描写があると鳥山さんのお茶目な一面に触れられたようで嬉しい。思わず、本来は4本のピッコロ大魔王の指が5本になっていた時に、「ユビが1本ふえちゃった」と隅に書かれていたのも思い出してしまった。 『ドラゴンボール』にはメタ発言がたくさんあるが、それも作者である鳥山さんの遊び心ゆえだろう。シリアスなだけではなく、時にはこうした息抜き的な要素もあるからこそ、面白い作品になっている。
大山元