フィンテックと少子化時代に銀行はどう変わるのか ── 浪川攻氏に聞く
トランザクションレンディングの脅威
──三井住友だけでなく銀行の店舗は今後、大きく変わっていくことになるのでしょうか? 浪川氏 ここ数年、アメリカでもヨーロッパでも大きな銀行が出している店舗は、まったく今までとはタイプが違うものです。スタッフは数人だけ。これまでの銀行のように事務の人が一生懸命、処理をしている光景なんてまったくない。椅子もない。そういう店舗ばかりです。三菱UFJも戦略化して準備を整えていますので、ここ1~2年で物凄く変わるんじゃないでしょうか。 ──先ほどフィンテックの話しがありましたが、フィンテックやITテクノロジーと銀行との関係はどのようなものなのでしょうか? 浪川氏 フィンテックという言葉は曖昧ではあるのだけれど、銀行側にとってのフィンテック、デジタル技術の導入やデジタル技術の進歩というのは、二つ意味があって、一つは敵が増えるということ。ITやベンチャーがデジタル技術を使ったよりよいサービスをすごく安い金額でやってくる。銀行にとってこれまでなかった敵を相手にしなければならないということがあります。もう一方で銀行はITによってコストを削減することができるんですね。だからフィンテックというアメは銀行にとっては辛くもあり、甘くもあるアメなんですね。 ──現実に今、日本の銀行がフィンテックやITに関し脅威に感じているとすれば、それは例えばどのようなことですか? 浪川氏 個人取引の分野では見えにくいところがありますが、中小企業取引で言うと、例えば楽天は仮想空間にモールをもっています。モールの加盟店が仕入れをするのに、仕入れ代金を貸すとか、そういうことかできるわけですよ。そうなってくると、既存の銀行が、楽天のモールに加盟している店舗にですね、うちで借りてくださいと言っても、なかなか入り込めない。そういうことがすでに起きていて、これはとても銀行にとって脅威です。トランザクションレンディングというのですけれど、IT企業はモールに入っている加盟店で何が売れているのかわかっているわけですよね。そうすると店舗の資金繰りも把握できてる。店舗の経営状況も把握しているわけです。圧倒的に貸せるか貸せないかの融資審査のデータが揃っちゃってる。だけど銀行は店舗の経営がどうなのかすべて調べなければならない。圧倒的に初めから勝負に差がついてしまっているわけです。