ストレスが人を幸せにする&強くする!? 研究で明らかになった驚きの事実
世の専門家たちは、長年にわたりストレスの危険性を説いてきた。ストレスは心疾患や糖尿病、うつ病や頭痛といった問題のリスクを高めると繰り返し警告してきた。それでも現代社会からストレスが消えることはなく、2017年には、米国心理学会が2007年に調査を開始してから初めてとも言えるペースで、米国人のストレスレベルが急上昇した。 【動画】ストレス軽減、減量、睡眠の改善とメリットたくさん!自宅でできる「有酸素運動」 『Healthline』誌が行った調査によると、2015年の段階で米国民の62%は何らかの不安を感じていた。そして2017年は、お金、仕事、人間関係、この時期(年末年始)特有の義務といった通常のストレス要因に不安定な政治情勢が加わったことで、ストレスレベルが急上昇したと思われる。 面白いのは、このような動きの中でストレスを“擁護する”研究者が増えており、日常的なストレスをポジティブな力として捉えれば、そのダメージの一部から自分の身を守れるばかりか、ストレスを利用して学習・成長・繁栄することもできるという研究結果が相次いで発表されていることだ。米スタンフォード大学のアリア・クラム心理学助教授によると、人間の闘争・逃走反応は、私たちが身の安全を確保して日常的な問題に対処するための機能。実際にストレスは、私たちがより強く、より速く、よりエネルギッシュで、よりやさしい人間になる過程を助けてくれる。
ストレスの隠れた利点
数年前、米ウィスコンシン大学の研究チームが発表した研究結果は、この闘争・逃走反応に対する専門家たちの考え方を否応なしに一変させた。この研究チームは1998年の米国民健康調査に参加した約3万人のデータを分析。この調査の中で参加者は、過去12ヶ月でストレスを感じたときのことを振り返り、そのストレスが自分の健康に与えた悪影響のレベルを見積もっていた。 研究チームは2006年までの死亡記録を調べ、国民健康調査においてストレスのレベルが高く、それが健康に悪影響を及ぼしていると答えた人は、若くして死亡する確率が43%も高いことを突き止めた。 「その一方で、ストレスレベルは高くても、それが体に悪いと思っていないかった人たちは参加者の中で死亡率が最も低いという結果になりました」と説明するのは、スタンフォード大学の健康心理学者で著書に『The Upside of Stress: Why Stress Is Good for You and How to Get Good at It』を持つケリー・マクゴニガル博士。「この人たちは、ストレスをほとんど感じていないと答えた人たちよりも死亡率が低かったんです」。この死亡率が最も低かった集団は、むしろストレスを体に良いものとして見ていたそう。ストレスが健康と幸福度に良い影響を与える可能性があることは別の研究でも証明されている。 これまでの研究により、ストレスは免疫系を強くすることも分かっている。私たちが強いストレスを感じると、体内では15分以内に病原体と戦う血中の細胞が総動員され、全身を駆け巡り、より強力な免疫反応を発動させる。米マイアミ大学ミラー医学部で精神医学を専門とし、ストレスが免疫機能を強化したり抑制したりする仕組みについての研究を続けてきたフィルダウス・ダブハー教授によると、風邪や感染症と戦う際に役立つ免疫反応は、一時的なストレスによって強化される。 それだけではない。ストレス下、特に居心地の悪い社交の場では、脳下垂体からオキシトシンが分泌される。オキシトシンは共感力を高め、社会的な結束を強化するホルモンであることから、“道徳分子”と呼ばれている。そして、このオキシトシンはストレスフルな出来事の真っ只中で驚くような働きをする。なんと、私たちを「人に助けを求めたい」という気持ちにさせてくれるのだ。 米イェール大学の精神医学教授で『Resilience: The Science of Mastering Life's Greatest Challenges』共著者のスティーブン・サウスウィック教授によると、友達とつながるのは最も健康的なことの1つ。「これはストレスに強くなるための効果的な戦略です」。家族や友達のネットワークを築いておけば、逆境に見舞われたときも心強い。また、ストレスフルな状況に力を合わせて取り組めば、みんなとの結束が深まって強くなる。長期的に分泌されると害になる恐れがあるコルチゾールも、交通事故のようなトラウマ的な出来事から立ち直りたいときは役に立つ。トラウマ的な出来事を経験した人々を対象とした研究結果を見る限り、ストレス反応が強い人(コルチゾール値が高い人を含む)は回復が早い傾向にある。 「ストレス反応が有益と言われることは少ないですよね」とマクゴニガル博士。「でも、困難な状況ではストレス反応が多くの点で最大の味方になります」 生理学的な観点から見ると、ストレス反応は、私たちが喜びや勇気を感じたときの反応と非常に似ている。